発がん性リスクに40年間沈黙し続けた世界のGSK 潰瘍治療薬ザンタックは最も売れた処方薬だった
FDAに責任はないか
FDAはグラクソとのやり取りについてコメントを控えたが、安全かつ有効で品質が確保された医薬品へのアクセス提供に取り組み、「最新の科学に従って」ベネフィットとリスクを評価していると資料でコメント。適切と判断された場合、医薬品の市場からの撤去を要求するとし、「新たな不純物確認や新たな製造工程の活用、科学の進歩などに際し、FDAは安全性や品質、有効性改善に取り組み、生じつつある患者の健康へのリスクを調査し続ける」とした。市場からラニチジンを排除したFDAの判断は、胃の中ではなくラニチジンの中でNDMAがいかに形成されるかに基づくものだった。FDAはいったん摂取されたラニチジンがさらなるNDMA形成にはつながらないとしているが、一部の科学者はこれに異を唱える。
20年12月、GSKは根本的原因の分析だとする結果を公表したが、結論は出なかった。同社の科学者はラニチジンの中でNDMAがどのように形成されるか正確に判断できないとし、1970年代に最初に開発された際に、NDMA形成を誰かが合理的に予測するのは不可能だったとした。
その半年後にFDAは再び異例の重要な判断を下した。ラニチジンからNDMAが検出され、ラニチジンは人への発がん性が疑われるが、ザンタックががんのリスクを高めるという「一貫したシグナルはない」というものだった。ラニチジンを服用した人の尿のNDMAレベルを調べた10ページから成る研究報告書の8ページ目で指摘した。この研究は外部科学者が執筆した7つのリポートに依存するものだった。
FDAの結論は最終的なものではなさそうだったが、今ではグラクソの広報資料に盛り込まれており、恐らく訴訟で抗弁する際の根拠とするもようだ。
その後実施された3つの研究で膀胱(ぼうこう)や肝臓などのがんとラニチジンの関連性が見つかったが、FDAは自らの主張を変えていない。これについては、危険な化学物質が医薬品に潜んでいたことを何十年も容認したFDAを免責するためのものだとの批判もある。
サノフィはザンタック錠でNDMAがどのように形成されたかを独自に調査した。一部変更を加えることでFDAの精査に耐えザンタックを市場に戻せると期待してのことだ。同社が「プロジェクト・チャーチル」と呼んだ取り組みは期待外れに終わり、前例のない決定につながった。サノフィはラニチジンを成分とするザンタックを、受け入れられる形で作る方法を見つけられなかった。
同社は21年、活性成分ファモチジンでザンタックを作り変えた。これは胸やけ治療薬「Pepcid」として店頭に並んでいる。サノフィはウェブサイトで「ザンタックブランドの確立された歴史とレガシーを基礎とするものだ」と説明している。
原題:Zantac’s Maker Kept Quiet About Cancer Risks for 40 Years(抜粋)
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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著者:Anna Edney、Susan Berfield、Jef Feeley
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