発がん性リスクに40年間沈黙し続けた世界のGSK 潰瘍治療薬ザンタックは最も売れた処方薬だった

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

がんに関する懸念から用量や適応対象となる潰瘍の種類に話は移った。輸送や管理の条件やラベルの警告もさほど話題にならなかった。話し合いのペースは速く、昼休み直前に外部の専門家から成る諮問委がFDAに承認を勧告した。急性十二指腸潰瘍の治療薬として1日2回150ミリグラムを最長8週間服用することを認める内容だった。1年後の83年5月にFDAはザンタックの販売を承認した。

 

処方薬としての抗潰瘍薬市場の53%を占める

89年までにザンタックの価値は20億ドル(約2680億円)に達した。グラクソの売上高の半分を占め、処方薬としての抗潰瘍薬市場の53%を占めるようになった。

96年春にはザンタックの市販薬が投入された。ピンク色の同薬は75ミリグラムで1日1、2回の服用が可能だった。既に米国では人々が胸やけ治療薬に毎年多額を支出していた。グラクソのマーケティング担当者の準備は整っていた。キャッチフレーズは「伝説は生き続ける」だった。

2019年9月、FDAはラニチジンについて警告する19ページから成る資料を受け取った。FDAから独立して運営されている民間の研究所バリシュアはザンタックおよび複数のラニチジン後発薬から極めて高レベルのNDMAを検出したと指摘。検査したラニチジンの全バージョンでNDMAが確認され、問題はこの分子に固有のものだと結論づけた。

次ページ社内実験の不都合な真実は当局に提出されず
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事