発がん性リスクに40年間沈黙し続けた世界のGSK 潰瘍治療薬ザンタックは最も売れた処方薬だった

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

米連邦裁判所はGSKに有利な判断を下す

最初から最後まで、グラクソはラニチジンの危険性について自社の科学者と独立系研究者から警告を受けていた。40年間にわたる記録は、数千ページに及ぶ何百もの文書から明らかになったもので、その多くはこれまで非公開だった。ブルームバーグ・ビジネスウィークは、なお多くが封印されたままの裁判所への提出資料や試験資料、FDAの議事録、新薬承認申請などを情報公開法の下で開示請求。これら資料は、FDAがラニチジンを承認した際、がんのリスクを検討していたことを示しているが、グラクソは重要な研究結果の一つをFDAと共有していなかった。同社はさらに、懸念を最小限に抑えることを意図した欠陥のある研究を後押ししたほか、問題を緩和し得た方法で同薬を規定通りに輸送・貯蔵していなかった。

ザンタックやそのジェネリック(後発医薬品)を服用した7万人余りが、汚染されリスクがあるとみられる医薬品を販売したとして同社を州裁判所に訴えている。提起された訴訟の最初の審理が2月下旬にカリフォルニア州アラメダ郡の州裁判所で始まるはずだったが、判事のスケジュール調整のため夏まで延期される見込みだ。裁判にはファイザーやサノフィなど、後からザンタックを販売した企業もかかわる。

米連邦裁判所は昨年12月、GSKに有利な判断を下した。フロリダ州南部地区の連邦地裁のロビン・ローゼンバーグ判事は審理前の整理手続きで1つにまとめられた数千件の訴訟を退けた。判事は「ラニチジンとがんの間で観察できる統計的に有意な関係が科学コミュニティーで広く受け入れられてはいない」と断じた。

GSKの広報担当者キャサリーン・クイン氏は声明で、「裁判所の見解はこの訴訟を通じてGSKと共同被告人が取っている立場と一貫している」とし、「科学的なコンセンサスでは、ザンタック(ラニチジン)がいかなる種類のがんについてもリスクを高めるといった一貫性ないしは信ぴょう性のある証拠はない」ことが疫学調査を含む3年超の広範囲な研究によって示されたと指摘した。原告側は上訴する方針だ。

GSKはなお州裁判所で審理を待つ数万件の訴訟に向き合う必要がある。同社は声明で「この訴訟のあらゆる主張を含め、引き続き精力的に争う方針だ」とし、それ以上のコメントを控えた。

 Illustration: Ibrahim Rayintakath for Bloomberg Businessweek

NDMAについては米環境保護局(EPA)やFDA、世界保健機関(WHO)などあらゆる公衆衛生当局が人にがんを引き起こす可能性が高いと指摘する。だがある人のがん細胞が医薬品によって変異したと証明するのは難しい。グラクソの判断はその可能性を絶対に考えたくなかったことを示唆する。

次ページ短期利用に限りの推奨は名ばかりだった
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事