「Chat GPTが雇用を奪う」と考える人に欠けた視点 AIは世界をオートフォーメーション化しうるか

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しかし、昨今のインフレの深刻化のもとで、中央銀行が金融引き締めへと転換した結果、株価が下落し、GAFAもそのあおりを受けて業績が悪化しています。そこで大量のレイオフを行うとともに、これまで構築したプラットフォームやアルゴリズムの力をつかって収益化できるところで確実に利益をあげる方向へとシフトしようとしています。

イーロン・マスクによる従業員のリストラとTwitter有料化の流れはその典型でしょう。「プラットフォーム資本主義」や「テクノ封建制」という言葉がありますが、まさに、デジタルプラットフォームやクラウド、さらにそれと結びついたリアルなプラットフォームの独占を通じて、「賃料(レント)」を収奪するモデルへの移行が本格化している印象を受けます。

現実に起きているのは「雇用の劣化」

資本主義のもとでは技術開発は、人間の労働を助けるためとか、豊かな生活を送るためとか、そういう方向を向いていません。資本主義のもとではテクノロジーに対する投資は、利益の最大化という目標に合致するかぎりでしか行われないからです。

それゆえ、労働時間を削減するのではなく、働いている人を常時監視したり、日々の生活を充実したものにするのではなく、スマホに依存させて、より多くのモノやサービスを購買するように誘導したりという方向でテクノロジーは進化していくことになります。

雇用についていうと、オートメーション論者はAIやロボットで大失業が起こると言いますが、現実に起きているのは「雇用の劣化」です。日本では、低賃金不安定雇用に依存したビジネスモデルが蔓延していますから、このことはみなさんも実感されていると思います。

高度成長の時代が終わりを告げ、資本蓄積が停滞し、成長エンジンである工業が衰退していくと、その結果として、労働需要が低迷し、全体として労働条件は低下していきました。もちろん、サービス業では雇用が増大しましたが、そのような業種では生産性の上昇によって利益が増えていくわけではないので、人件費の削減が基本的なトレンドとなっていきました。

未来を予測し、お金を集めて、しかるべき産業分野に投資するのは簡単なことではありませんよね。それよりも、これまでと同じような産業分野でただ人件費を削って、低賃金で雇って儲けるほうがずっと簡単です。よく言われていることですが、人件費が安すぎてイノベーションが起きづらくなっている日本はその典型です。

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