差別発言「オフレコ破り」記しておきたい重要論点 政府関係者も企業幹部も一般人も心得ておきたい事

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一口にオフレコ取材といってもいろいろあります。まず「完オフ」です。これはコメントも名前も一切出してはいけないやり方です。この場合、メモを取ってはいけないこともあります。ほかにも、例えば主語を「政府高官」「国際金融筋」などとぼかすことで内容を記事にしてよいケースもあります。また、記者が早朝や深夜に政治家や政府関係者、企業幹部などの自宅前などで取材する「夜回り」「朝回り」もオフレコが多いのが実情です。

民間企業のインタビューでもオフレコ取材は存在します。社長インタビューなどで「この部分はオフレコですから、記事にはしないでください。それを約束してくれるなら説明します」というケースです。記者側にはオフレコを守る道義的責任があり、ほとんどの場合、記者は約束を守ります。取材源との信頼関係を崩すと、その後、より重要な情報を得にくくなるためです。

差別発言はオフレコでもご法度だが・・・

では、どうして今回はオフレコのはずの発言が報道されたのでしょうか。これは差別発言だったことが大きいと思います。「オフレコ破り」をした側の毎日新聞も、「性的少数者を傷つける差別的な発言は岸田政権自体の人権意識に関わる重大な問題だと考え、荒井氏に実名で報じると伝えたうえで3日午後11時前に記事を配信した」としています。

今回は「匿名であれば記事にしていい」性質のオフレコ取材だったそうです。仮に発言が「政府関係者」の主語で記事にされていても、「政府関係者って誰だ?」ということになり、前首相秘書官は責任を問われていたと思われます。これまでも「オフレコ破り」で問題発言や行動が報じられ、要人が責任を取る羽目になった事例があるだけに、今回は前首相秘書官の脇の甘さが問題だったと言われても仕方がありません(差別的な認識はさらに問題ですが)。

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