スシローが「外食テロ」に打ち勝てた決定的な理由 続発する「外食テロ」に勝つ企業、沈む企業の差

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コロナ禍や物価高による苦境の中で、安価で質の高いサービスを行っている飲食チェーンに対して、消費者は同情的になっているし、「支援をしたい」という意識も生まれている。そこを敏感に読み取って対処したスシローの感性は見事だったというほかない。

3については、バイトや顧客などの第三者に非がある場合、企業側があまりに強く被害者だという態度を示しすぎると、「保身では」「企業側の対応も感じが悪い」と思われてしまい、批判を浴びてしまうことがある。

そこは、先述の2の話とも絡むのだが、企業側が「顧客を守る」ために最大限に対応を行っていることも示すことで、批判を回避しやすくなる。

たとえば餃子の王将の調味料の撤去は、顧客にとっては不便なことに違いない。しかし、撤去するのは、「(お店ではなく)迷惑行為を行う客から、ほかの客を守るため」と感じられれば、印象はまったく変わってくる。そうなれば目先の不便について、顧客は「自分のため」と受容しやすくなるだろう。

今後取るべきは、多方面に配慮した「アメとムチ」戦略

上記の「3原則」に加えて、著者がスシローの対応に関して、秀逸だと思ったことがある。それが、2月10日に、迷惑行為に対して「厳正に対処する」とする一方で、当事者に関して「直接的な危害となるような言動はお控えていただくよう伏してお願い申し上げます」という文書を発表している点である。つまり、加害者をひたすらに糾弾するのではなく、一定の配慮も示しているのだ。

実際、迷惑行為を行った高校生、および保護者に対して明らかに過剰なバッシングが行われており、高校生は高校を自主退学するまでに至っている。

スシロー側の要請は、公正で配慮が行き届いたものであるが、スシロー側が「高校生を追い込んだ」と批判されるのを回避するという効果ももたらしている。

SNSでは「#スシローを救いたい」のハッシュタグが拡散、著名人も擁護意見を表明したり、スシローの店舗を訪問して動画共有サイトやSNSにその様子をアップしたりする動きが巻き起こっている。

さらに。スシロー側はそれを受けて、2月13日~17日までの期間限定で「全品10%OFF」のキャンペーンを実施するという対応を行っている。

スシローの一連の対応は、「正しいことを、適切な方法で主張する」という正統的なやり方を踏襲しつつ、変化していく「世論」を捉え、各所に配慮しながら迅速に対応していくという点で、高度なリスクマネジメントを行ったといえるだろう。

スシローを始めとする、昨今の外食企業に対する一連の迷惑行為を、単なる「世間を騒がせたスキャンダル」としてではなく、「企業のリスク対応」という視点から見直すことで、改めて学ぶべき点は多々あることに気づかされる。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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