「セブンとイオン」意外と知らない稼ぎ方の差 似ているようで異なる2つの大手流通グループ
イオンのセグメント別業績をみると、GMS(総合スーパー)2.3兆円、SM(食品スーパー)1.9兆円、ヘルス&ウェルネス(ドラッグストアなど)0.85兆円は営業収益の中心ではあるが、営業利益でみれば、総合金融426億円、ディベロッパー333億円、ヘルス&ウェルネス308億円といった構成であり、GMSやSMの収益貢献はかなり低いことがわかる。
GMSは前年同期比で大きく改善してはいるものの、148億円の赤字であり、常に市場からはGMSの収益改善が課題だと厳しい指摘もされている。
セブン&アイとイオンは収益力などではまったく異なるものの、総合スーパー、百貨店といった総合小売業の業績が振るわず、市場からの低収益との指摘を受けている点では共通している。
ただ、それぞれのグループにとって、総合小売業の位置付けは大きく異なる。総合小売業のグループシナジーという意味では、セブン&アイにおいてはその業態構成や収益構造からみれば、シナジーは低いと言わざるをえない。セブン-イレブンは小さな店舗が全国各地に網の目のように張りめぐらされているチェーンストアであり、総合スーパーや百貨店との連携といっても限度がある。
あえて言うなら、総合スーパー事業は、①イトーヨーカ堂が首都圏の一等駅前立地を押さえていること、②ヨークベニマルが国内有数のオペレーション能力の高い企業であること、③食品に特化していけば、PB開発などでのシナジーを発揮できる、という可能性があり、この部門がコンビニ事業と連携する意義は十分にある。とはいえ、すでに売却が決まっている百貨店や専門店に関しては、シナジーは考えにくい。
多くのセグメントを組み合わせているイオン
一方、イオングループの構造はそうではない。イオンの主力フォーマットは、総合スーパーを核店舗とする超大型ショッピングモール(イオンモールなど)や、食品スーパー・ドラッグストアなどを加えて核店舗とした近隣型ショッピングモール(イオンタウンなど)であり、各セグメントの業態を単独で出店することが前提ではない。
こうした複合的な施設を運営するのがディベロッパー部門で、モールを利用する多様な来店客の決済や金融を取り込むために、総合金融事業がある。多くのセグメントを組み合わせて構成しているのが、イオンの事業であり、複合的商業施設単位で考えるなら、集客装置である総合スーパー、食品スーパーといったセグメントが高い収益をあげている必要はない。小売業においては「1つの店の中でも集客部門と収益部門が分かれていて、トータルで儲ける」というのはごく普通だからである。
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