テレビ局から有力社員が次々いなくなる深刻事情 羨望の的だったはずが魅力的な企業ではなくなった

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またテレビを見る人口は、この10年で一気に減ったという実感がある。

2010年頃までは、1週間の中で世帯視聴率が15%を超える番組は、すべての局を合わせれば毎日1本はあった。ゴールデンタイムでは10%を超えて「一人前」と考えられていた。

しかし現在、15%を超える番組はほとんどない。

10%を超える番組でさえも「数えるほど」である。

その多くも高齢の視聴者が支えている番組なのだ。

YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなど他の動画コンテンツが溢れている時代に、テレビに再び視聴者が戻ってくることはあるのだろうか。それがテレビ局の置かれたポジションである。

芦田氏らの〝本意〟を知りうる立場にはないが、私がもし現在30代前半のテレビ局ディレクターだとしたら「40代以降の自分」を思い描くことは難しかっただろう。

もちろん会社という「組織の中」でキャリアアップをするという形もあるのだが、いまのテレビ局が「面白い番組を作りたい」という思いを貫徹できる組織だと断言することはできない。

テレビ以外でも「映像」「番組」を作れる

さらに現在はテレビ以外でも「映像」「番組」を作る場は数多くある。

「Amazon」や「Netflix」などは潤沢な資金によって、多くの予算を番組制作に投じることが可能である(その番組が面白いかどうかは、個別の番組次第であるが)。

またYouTubeなどによる配信や、イベントやコンサートのライブ配信、企業の映像制作など、テレビ局で身に付けたスキルを活かす場は、「テレビ以外」にもいくらでもある。

私がテレビ局に入ったのは「バブル」真っ盛りの時代だった。

金余りの時代、スポンサーは惜しげもなくCMに資金を投下した。

番組予算もたっぷりあり、派手な企画・演出も可能だった。

「コンプライアンス」という言葉自体も存在しなかった。

20代前半の私は、「腕を磨いて5年後10年後には面白い番組を作ってやろう」と思うことができた。

私自身は、50代後半になった現在もテレビ局で番組制作に携わっていて、相応の「面白さ」は感じているが、20代30代のテレビ局社員にとって10年後20年後に「面白い」と思えるかは不透明だろう。

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