テレビ局から有力社員が次々いなくなる深刻事情 羨望の的だったはずが魅力的な企業ではなくなった

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さらに「辞める理由」として正面切って言われることは少ないが、テレビ局社員の「年収」も下がっている。

民放キー局は、かつては〝高所得〟の代名詞的に言われることがあった。

実際、30歳前後で年収1000万円を超えることは珍しくなかった。

私が20代の時は、残業代が「青天井」だったのでハードな徹夜勤務が多い時期は収入もグンと増えた。

しかし現在「残業代が青天井」などというテレビ局はない。

給与・賞与もだいぶ「抑え気味」となった。上場するテレビ局7社の平均年収の推移を東洋経済が集計してみたところ、この5年でざっと15%ぐらい減っていることがわかった。本社の中枢機能を担う純粋持ち株会社を軸にしたうえでの計算なので、現場ではもっと減っているかもしれない。

現在テレビ局に対して「高年収の企業」というイメージは薄れてきただろう。

就職人気は下がり、ベテランが去るケースも

そして、就活学生たちによる「就職人気ランキング」でもテレビ局は凋落の一途である。

15年前の2008年に『週刊東洋経済』の就職人気ランキング1位は「フジテレビ」だった。

そして、20位以内にテレ朝、日テレ、TBSと各局がランクインしていた。

わずか15年前は、テレビ局は「大人気企業」だった。

しかし昨年の「就職四季報プラスワン」では、民放キー局はトップ20に1社も入っていなかった。

トップ20どころではない。「トップ100」にも〝ひとつも〟入っていなかったのだ。

つまり、現代の大学生にはテレビ局は「魅力がない」と思われているのである。

就職人気が低いということは、〝人材〟も集まってこなくなるということである。

そして従来であれば、軸になってテレビ番組を支えるはずの30~40代で辞めていく社員にとっては「将来の夢をイメージしづらい」企業になっているのだろう。

若い人間だけではない。

昨年、フジテレビが50代の社員に対して「退職金割増・最大1億円」という早期退職制度を発表したところ、看板プロデューサーをはじめ100人以上が応募したという〝事件〟があった。

キャリアの総仕上げを考える50代にとっても、「定年まで勤め上げる」だけの魅力を失っていたということだろう。

厳しいコンプライアンス、少ない番組予算という制約、他の映像メディアという「選択肢」。さらに自らのライフプランなどを合わせた重層的な理由によってテレビ局社員は会社から去っていく。

就活大学生から30代40代の社員、さらに50代のベテラン社員まで、「テレビ局に魅力がない」と考えているのであれば、この先さらに人材は〝流出〟していくに違いない。

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村上 和彦 TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授

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むらかみ かずひこ / Kazuhiko Murakami

1965年生まれ、神奈川県出身。日本テレビ放送網に入社し、スポーツ局に所属。ジャイアンツ担当、野球中継、箱根駅伝などを担当する。その後制作局に移り、「スッキリ」「ヒルナンデス」「ブラックバラエティ」「24時間テレビ」など幅広いジャンルで実績を上げる。2014年、日本テレビを退社し、TVプロデュースの他、執筆、講演会など活動の場を広げている。現担当 : BSフジ「プライムオンラインTODAY」監修演出など。

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