「インド留学」日本人学生にとって3つのメリット 最難関インド工科大学ハイデラバード校を視察

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インド留学が今まで不人気であった理由として、いくつかの要因が考えられます。代表的なものは次の4つです。

□ 治安や安全性への懸念
□ 衛生面への懸念
□ インド留学の情報量の少なさ
□ 日本人留学生の欧米志向の強さ

特に留学を決断する要素の中で治安は最も重要なものの1つです。2012年の性犯罪事件をはじめとする痛ましい事件がメディアでも大々的に報道され、特に留学の多数派である女性やその保護者から敬遠される傾向にありました。

イギリスの新聞「Economist(エコノミスト)」による世界平和度指数(Global Peace Index)によるとインドは、世界163カ国中135位(日本は10位)と下位の部類に入ります。

治安の懸念に加えて衛生・環境問題もあるため、ここまで見ていく限り、インド留学の可能性は薄いように感じられます。正直に申し上げると私自身も、これまでインドへの留学に関心が高いとはいえませんでした。

しかし、拙著『海外大学進学のススメ』の中でインドへの大学進学を取り上げたことがきっかけで、JICA(独立行政法人国際協力機構)の関係者を通じて、前述のインド工科大学を実際に訪問することになったのです。

ここからは、実際にインド留学の可能性について現地視察や専門家の意見も踏まえて考察していきます。

入試倍率50倍以上!インド工科大学ハイデラバード校

インド工科大学ハイデラバード校(IITH)があるハイデラバードは、テランガナ州の州都でインド南東部に位置しています。空港から街に向かうとIT企業の巨大なビルが立ち並び、まるでアメリカのシリコンバレーのような雰囲気を感じます。

中でも特に目を引くのは、世界最大級のイノベーション施設「T-Hub2.0」です。約5万4000平方メートルの広大な敷地では、2000社のスタートアップが入居できるといいます。これは州政府が企業の誘致だけでなく、スタートアップ企業への支援やIITなどの大学でのIT人材の育成に力を入れていることの象徴的な施設といえるでしょう。私も実際に見て、そのエネルギーとスケール感の壮大さに驚いた一人です。

T-Hub2.0の内部(筆者撮影)

IITHは、そこからさらに車で1時間ほどのハイデラバード郊外に位置し、大学・大学院合わせて約4200人の熾烈な競争を勝ち抜いたトップレベルの学生が学んでいます。

インド工科大学、通称IITとは「国家的重点機関」として設立された大学の総称で、インド国内に23大学あります。入試の倍率は、なんと50倍〜100倍といわれています。最初は、カラグプルで1951年に設立、そしてボンベイ(1958年)、マドラス、カンプール(1959年)、デリー(1963年)、グワーハーティ(1994年)、ルールキー(2001年)とその数を増やしていきました。中でもハイデラバード校(IITH)は、日本の外務省とJICAから技術・財政支援を受けて設立された経緯があるため、特に日本との関係性が深い事情があるそうです。

そのIITHですが、インド工科大学内でのランキングは8位、Times Higher Educationのアジアランキングは174位(2022年)の大学で、インド国内初のAI(人工知能)学科を設置した大学としても知られています。

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