「現金ばらまき」では少子化解消されない実態 「優等生」スウェーデンでさえ出生率は低下

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ストックホルム
少子化対策の模範といわれてきたスウェーデンでさえ、過去10年間、出生率は下落傾向にある(写真:だっち/PIXTA)

少なくとも公式発表によると、中国では昨年、出生数が死者数を85万人下回った。世界では人口減少国が増え続けているが、これにより中国もその仲間入りをしたことになる。

長年にわたる出生率の低下に加え、移民の流入がほとんどないか、流入する移民よりも流出する人口のほうが多い国々が人口減を起こしており、そこにはイタリア、ギリシャ、ロシア、東欧や南欧の国々、韓国や日本といったいくつかのアジア諸国が含まれる。

オーストラリア、フランス、イギリスなど、まだ人口が減少に転じていない国々ですら、少子高齢化の問題に長年対処を迫られている。

歴史が示唆するところでは、人口がいったん減少に転じると、その流れを反転させるのに政府にできることはほとんどなくなる。高齢者の割合が増えれば、一段と大きくなった高齢者の福祉費用を、より少ない人数の若い世代で負担しなければならなくなる。

アメリカやドイツは出生率低下を移民獲得でカバー

アメリカやドイツといった国々は出生率が比較的低くても、移民の力強い流入に頼ることができている。だが、中国のように移民の流入数よりも流出数のほうが多い国々が人口を増やすには、出生数を増やさなくてはならない。

中国の人口動態を専門とするノースカロライナ大学チャペルヒル校の社会学者、蔡泳は「明るい材料は、中国政府がこの問題をしっかりと認識していることだ」と語る。「反対に暗い材料は、これまでの経験からして、中国政府にできる対策はほとんどないということだ」。

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