「現金ばらまき」では少子化解消されない実態 「優等生」スウェーデンでさえ出生率は低下

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ジョンストンによると、多くの親は住宅費や教育費の高さを、次の子どもをもうけられない大きな理由に挙げている。「今でも十分な広さの家には手が届かないのだから、2人の子どもと暮らせる広さの家など買えるはずがない」というわけだ。

少子化は世界的に見れば悪いことではない

中国の人口減を世界の成長にとっての凶兆と捉える経済学者とは対照的に、人口動態学者の多くは楽観的な見方を示している。人口減にはメリットがあるという立場だ。

国連人口部の部長、ジョン・ウィルモスは、世界の人口が過去数十年間の加速度的な増加を経て、1970年から2014年の間に70億人超へと倍増したことに触れ、出生率の低下や人口減をお先真っ暗と見なす意見には誇張されたものが多いと指摘する。

例えば、日本は1970年代から人口減に直面しているが、それでも世界屈指の経済大国の1つであり続けている。「人々が想像していたような壊滅的な状況にはなっていないということだ。日本は死のスパイラルに陥っているわけではない」とウィルモスは言う。

世界全体の出生率は今も人口置換水準を上回っているため、移民の受け入れはこれからも多くの先進国にとって選択肢の1つであり続けるし、歴史的に移民を受け入れてこなかった先進国にとっても頼れる選択肢となる。日本に対する移民の純流入数は世界的に見れば低い水準ではあっても、コロナ禍前は着実に増え続けていた。

移民の流入がなければ、子育てとキャリアを両立できるようにするための現実的かつ強制的ではない対策、そして60代や70代の人々が働き続けられるようにする政策が人口減対策として重要になると、ウィルモスは言う。

「人口の安定化は、全体としてはいいことだ。全ての社会が高齢化に適応する必要がある。本当に重要なのは、変化のスピードがどれくらいになるのか、そして私たちがその変化にどれくらい速く順応できるのか、ということになってくる」

(執筆:Andrew Jacobs記者、Francesca Paris記者)

(C)2023 The New York Times

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