「現金ばらまき」では少子化解消されない実態 「優等生」スウェーデンでさえ出生率は低下
香港科技大学で人口動態を研究するスチュアート・ギーテル=バステンは、金銭的インセンティブを導入しても全体の出生数が増えることはほとんどなく、インセンティブが終了する前にその恩恵を得ようと子どもを持つ時期を前倒しするよう促すだけだと言う。
このように出生率が一時的に上昇して、その後急落すれば、予期せぬ影響が出かねないと、ギーテル=バステンは付け加える。「ある年に5万人の子どもが生まれて、次の年は10万人、その翌年が5万人というように出生数が大きく上下したら、その後の計画や教育にかなりの悪影響が出る」。
中国の出生率は世界最低水準
中国が人口減をどこまで食い止められるかは未知数だ。中国の人口減は、何十年も前に始まった出生率の低下に起因する。1979年に一人っ子政策が導入される以前から、中国の出生率はすでに低下し始めていた。
中国政府は2016年に一人っ子政策を公式に撤廃し、現金給付や税優遇といった子育て支援策を展開しているが、それでも出生数の増加にはつながっていない。国連のデータによると、中国の出生率は、一人っ子政策が撤廃された時期に多少上昇したものの、その後は低下している。当時はオーストラリアやイギリスと同水準の女性1人あたり約1.7人だったものが、現在では約1.2人と世界最低水準にまで落ち込んでいる。
今では何人でも子どもをもうけられるようになった中国だが、若い世代にその気はない。高等教育を受ける若者が急増している中国では、晩婚化、晩産化が進行。一人っ子世帯で育ったことから、小さな家族が当たり前と考える若者も少なくない。
ただ、2人目、3人目の子どもをもうける上でさらに大きな障壁となっているのは経済的な問題だと、シドニー大学で中国の人口動態を研究する経済学者のローレン・A・ジョンストンは指摘する。