「日銀新総裁は誰でもいい」と言える3つの理由 「危機」にある日銀に本当に必要なものは何か

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したがって、現在、大事なことは、日銀総裁人事ができる限り話題にならないことであり、話題になる期間が超短期で終わることである。

だから、今回の打診ネタをすっぱ抜いた新聞社は、日本経済にマイナスの影響を与えたといえる。話題になるのが予定よりも早まったからである。

次に危ないのは、国会での質疑である。野党が、新しい候補をつるし上げ、言質をとり、今後の日銀の行動の制約条件を増やす。これが最悪のシナリオである。

何もなくても、進む道が「ナローパス」(狭い道)すぎて、道が見えないぐらいなのに、これにさらなる制約条件が加わっては、まさに身動きが取れなくなってしまう。現状維持では、今は持たない。それは「日銀の死」「金融市場の死」「日本経済の死」を意味する。

ぜひとも、国会審議は「無風」「ニュースなし」で終わってほしい。それが今もっとも必要なことだ。日銀という組織にすべてをゆだねよう。

日銀の「風土や文化」に感じる不安

ただし、だ。

私がひとつ心配しているのは、日銀という組織の風土、文化である。どうも、風評、世間での評判を過度に気にすることがあるような気配がある。

たとえば、元日銀幹部で、現在民間エコノミストである方の書いた記事を読むと、やたら、受け身なのである。「何々をすれば『なんでやったんだ』と批判される恐れがあるから、これはあえてやる必要はない」とか、「こういう状況であるから、これこれと言われる恐れがあるから、李下に冠を正さず、というスタンスが望ましい」といった表現ばかりなのである。

これは危険だ。

世間は、何をしてもどうせ文句を言う。アメリカのFEDを見ていてもそうだ。しかし、実際は数日で、その現実を受け入れて、市場も次へ動く。だから、過度に、世間の評判などは気にしてはいけないのである。

市場の反応は注意する必要はあるが、世間の声、メディアの批判、そんなものは一切聞いてはいけない。政治的な無言の圧力も気づかぬふりをするしかない。10年前も本当はそうだった。

だが今は10年前とは違って、その余地はゼロである。だから、市場の反応を読むこと、場合によっては戦うことも辞さないこと、一時的な市場の反応、ショックは、不可避であるから、甘受し、そのショックによる被害を避けるのではなく、「ショックを起こすが、それを最小限にしようとする」、これらが重要である。

もし、日本銀行という組織が、世間の風を気にして、これらのことができなければ、日銀と金融市場は破綻するだろう。その場合は「日銀という組織がそういうものだった」「限界があった」と諦めるしかない。もはや、いまから組織文化を一朝一夕に育てることはできないから、現状でベストを尽くすしかない。

それでだめなら、それが日本の限界だ。腹をくくって、日銀総裁人事の国会中継も、新聞記事もネットの記事もみんなで無視するようにするしかないのである。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。

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