「日銀新総裁は誰でもいい」と言える3つの理由 「危機」にある日銀に本当に必要なものは何か

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彼は、歴代の議長であるアラン・グリーンスパン氏、ベン・バーナンキ氏などと異なり、何の色も特色もない。地味すぎる。だから「パウエル色」というのはまったくない。

だから市場関係者は、パウエルという個人に注目するのではなく、経済の統計指標、雇用統計、GDP、インフレ率にひたすら注目するのであり、FOMC(連邦公開市場委員会)の声明文や、政策決定メンバー全体としての将来金利見通し(ドットチャート)が注目されるのである。パウエル個人はどこにも出てこない。

インフレが止まらず、FEDは危機に追い込まれた。取れる道は限られている。ともかく、インフレを抑え込むために利上げをし続けるしかない。インフレが収まったら、引き下げる。迷いようがない。手遅れになったから、闇雲に上げるしかない。そして、インフレが収まったら下げる。単純だ。しかし、それ以外ない。それほど追い込まれたということだ。

イールドカーブコントロールを止める

一方、日銀が置かれている状況はアメリカに比べてはるかに困難だ。

はっきりとした急激なインフレではない。インフレ率は日本にしては高いが「何が何でも止めろ」、というコンセンサスができているわけではない。しかし、インフレは起きている。どう動くか難しい。

もちろん、より難しいのは、長期国債を抱えすぎて身動きが取れなくなった現状だ。買うのをやめれば、国債価格は暴落する(金利は急上昇)する。しかし、これ以上買い続けることも、もはややりたくてもできない。国債がマーケットに存在しなくなってしまったのだ。

つまり、困難すぎて、何もできない状況だ。したがって、今後の道は、ほぼ決まっている。

イールドカーブコントロールを止める。長期国債利回りの上昇を許容するが、金融緩和は継続する。つまり、短期金利はマイナス金利を維持するか、もしくはゼロに戻し、マイナス金利は解消するが、それ以上の利上げは当面しない。

普通の量的緩和に戻ることになるが、国債の買い入れ額を自分で決めることはできなくなる。長期金利が上がりすぎないように、しかし、国債市場は一定の機能を発揮するような状態にする。そうなると、日銀が国債買い入れ量を選ぶことなどできない。それは自然に決まってくるだろう。

後は、こうした一連の政策を、どのような順番で、どのくらい丁寧にやるかどうかだ。

次ページこれからは一段と「総裁の手腕」が問われる局面?
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