出生率0.81の「韓国」で起きている少子化の深刻 OECD加盟国の中で1を唯一下回る、対策は?

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韓国で男性の育児休業取得者が増えた理由として、女性の労働市場参加の増加や育児に対する男性の意識変化などの要因も考えられるが、最も大きな要因としては2014年から「パパ育児休業ボーナス制度」が施行された点が挙げられる。

同制度は、同じ子どもを対象に2回目に育児休業を取得する親に、最初の3カ月間について育児休業給付金として通常賃金(※)の100%を支給する制度だ。1回目の育児休業は母親、2回目は父親が取得することが多い(90%)ので、通称「パパ育児休業ボーナス制度」と呼ばれている。

(※)韓国における通常賃金は、基本給と各種手当で構成されており、変動性の賃金(手当)は除外される。通常賃金は、時間外・休日労働手当や退職金を計算するための基準となる。
◎育児休業給付金
韓国における育児休業給付金は、通常賃金の80%が支給される(上限150万ウォン×通常賃金の80%を1年間支給)。
給付対象:8歳以下又は小学校2年生までの子を養育する親(取得期間は子ども1人に対して男女ともに最大1年ずつ)
給付金:育児休業を取得している期間に通常賃金の80%を支給
 (月額給付上限は150万ウォン≒15万6740円)
 (月額給付下限は70万ウォン≒7万3145円)
ただし、育児休業給付金の25%は職場復帰してから6カ月後に一時金として支給

さらに「パパ育児休業ボーナス制度」では、最初の3カ月間の支給上限額は1カ月250万ウォン(約26万1233円)に設定されており、それは1回目に育児休業を取得する際に支給される育児休業給付金の上限額(1カ月150万ウォン(約15万6740円))よりも高い。

このように、育児休業を取得しても高い給与が支払われるので、中小企業で働いている子育て男性労働者を中心に「パパ育児休業ボーナス制度」を利用して育児休業を取得した人が増加したと考えられる。

実際、2020年における育児休業取得者数の対前年比増加率は、従業員数30人以上100人未満企業が13.1%で最も高い(従業員数10人以上30人未満企業は8.5%、従業員数300人以上企業は3.5%)。

◎「パパ育児休業ボーナス制度」
給付対象:育休取得をした誕生後12カ月以降の子どもについて、2回目の育休を取得する親
給付金:最初の3カ月は通常賃金の100%(月額給付上限は250万ウォン≒26万1233円)
続く4~12カ月は、通常賃金の80%(月額給付上限は150万ウォン≒15万6740円)

「3+3親育児休業制度」も2022年からスタート

韓国ではさらに2022年から、育児休業制度の特例として「3+3親育児休業制度」が施行されている。育児休業を取得する親の中でも、生まれてから12カ月以内の子どもを養育するために同時に育児休業を取得した父母に対して、最初の3カ月間について育児休業給付金として父母両方に通常賃金の100%を支給する制度だ。

この制度の導入に伴い、「パパ育児休業ボーナス制度」が改正され、適用対象が「産まれてから12カ月以降の子ども」に変更され、父母が順次的に(必ず母親と父親の取得期間がつながる必要はない)育児休業を取得した際に適用されることになった。

また、以前は父母が両方とも2回目の育休を取得した場合、先に2回目の育休を取得した方は80%の通常賃金を支給されていたが、改正後は父母ともに2回目の育休時の最初の3カ月は100%の通常賃金が支給されることになった。

◎「3+3親育児休業制度」
給付対象:誕生後12カ月以内の子どもを養育するために、同時に育休を取得する父母
給付金:最初の3カ月は通常賃金の100%を支給
→母3カ月+父3カ月:月額給付上限はそれぞれ300万ウォン≒31万3480円)
→母2カ月+父2カ月:月額給付上限はそれぞれ250万ウォン≒26万1233円)
→母1カ月+父1カ月:月額給付上限はそれぞれ200万ウォン≒20万8986円)
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