出生率0.81の「韓国」で起きている少子化の深刻 OECD加盟国の中で1を唯一下回る、対策は?

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そこで、韓国教育部は、学齢人口の減少に対応するために、大学自らが構造調整を行うように助成金を提示し、計96大学が2025年までに入学定員を減らすことを決めている。入学定員の削減規模は計1万6197人だ。地域別では非首都圏(※)が74大学で全体削減規模の88%に当たる1万4244人を減らすことになっている。

(※)首都圏(ソウル特別市、仁川広域市、京畿道31市郡を含む地域)を除いた地域。

地域別[第一級行政区画(※)]の出生率はソウルが0.63で最も低く、釜山(0.73)、大邱(0.78)、仁川(0.78)のような大都市の出生率が全国平均を下回っている。一方、韓国で出生率が最も高い世宗市の出生率は2020年と同じく1.28を維持し、光州市の出生率は少し改善されたものの、そのほかの地域の出生率はすべて2020年を下回った。

(※)韓国には17の第一級行政区画(1特別市・6広域市・1特別自治市・8道・1特別自治道)がある。

なぜ韓国は出生率が低い?

韓国における少子化の原因は、子育て世帯の経済的負担の問題だけではなく、未婚化や晩婚化の影響も受けている。しかしながら、今までの韓国政府の少子化対策は、出産奨励金や保育費の支援、児童手当の導入や教育インフラの構築など主に子育て世帯に対する所得支援政策に偏っている。2020年12月に確定された「第4次少子・高齢社会基本計画」も子育て世帯に対する支援策が大部分を占めている。

また、韓国ではまだ儒教的な考えが根強く残っており、結婚してから出産するケースが多い。しかしながら、多くの若者は安定的な仕事を得ておらず、結婚という「贅沢」を選択できない立場に置かれている。

韓国における20~29歳の若者の失業率は2020年の9.0%から2022年には6.8%に改善した。新型コロナウイルスのパンデミックによる落ち込みからの反動増の側面が強く、政府の財政支出が雇用を押し上げていること、人口構造的に若者人口が減少していることなどが失業率改善の主な理由である。

しかしながら、2022年の若者の失業率は全体失業率2.9%より2.3倍以上高く、同時点の日本の20~24歳と25~29歳の失業率4.8%と3.8%を大きく上回っている。

高い不動産価格も未婚化・晩婚化の一因になっている。韓国では結婚前に男性側が家を用意する慣習があるものの、近年の不動産価格の高騰は男性にとって結婚のハードルを高め、婚姻件数の減少にもつながっている。最近、韓国銀行(中央銀行)の急速な利上げに伴い、金利の上昇などで全国のマンション価格が下落しているものの、住宅ローンの金利も上がっており、若者にとってマイホームの夢は実現が難しいままである。

韓国政府は少子化の問題を解決するために、2006年から「セロマジプラン」(セロマジは新しく迎えるという意味)、「アイサラン・プラン」(アイサランは子どもを愛するという意味)などの少子化対策を実施している。

韓国における少子化対策がより積極的に推進されたのは、進歩政権の盧武鉉政権(2003年2月25日~2008年2月24日)時代である。つまり、盧武鉉政権時代には子育て世帯を支援するために、2004年6月に第1次育児支援政策を、そして2005年5月には第2次育児支援政策を発表した。

第1次育児支援政策では、未来の人材を育成するとともに女性の経済活動参加を奨励するために、出生率の引き上げ、優秀な児童の育成、育児費用に対する負担緩和、女性の就業率引き上げ、雇用創出などを目標として設定した。

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