「女性が辞めない会社」は、全員17時に帰る

連日の深夜残業から生まれた新しい働き方

総務部で経理を担当していた現広報部の向井亜矢子さんは、3年前に育児休業から時短勤務で復職した。が、休業中に会社の規模が大きくなっており、まったく仕事が終わらない。泣いて訴えると、社内の経理業務を外注することになった。現在もランクアップの経理業務は外部の会計事務所に全面的に委託しており、100万円未満は社員による確認も行っていない。

代表の岩崎裕美子氏は言う。「この仕事をほかの社員に任せても、また同じ問題が起きる。作業量が増えればまた人を増やさなければいけない。何も新しいことは生まれません」。

ランクアップ代表の岩崎裕美子氏。短大卒業後、JTB、広告代理店に勤務した後、元の上司が設立した別の広告代理店に転職。取締役営業本部長として、多くの化粧品通販会社をクライアントに持つ。2005年2月に退社後、同年6月にランクアップ設立

ルーティンワークや自社で必ずやるべき業務以外は基本的にアウトソースする。すべての社員が「不要な業務」「自分より人に任せる業務」「自分がすべき業務」に振り分け、自分がすべき業務だけに集中する。それが、ほぼすべての社員が17時に退社できる第一の理由だ。

会社のメイン業務は商品開発や広告宣伝。そのために、より多くの時間を「考える仕事」に使えるようにする。向井さんは空いた時間で、以前からやりたいと思っていた広報を担当するようになった。結果、この記事のようにメディアに取り上げる機会が増えつつある。

会社設立以来、ランクアップの業績はずっと右肩上がりだ。前2014年6月期は売上高59億円、過去最高益を達成した。看板商品である「ホットクレンジングゲル」は2006年に販売してからの累計販売本数が400万本を超えるヒット商品で、今期も売上高は65億円を超える見込みだ。

「とにかく長時間労働しない会社を作りたかったんです。そうすれば女性が一生働き続けられるはずだと思っていました。仕事のために結婚をためらうこともなく、何回出産しても戻って来られる会社にしたかった」。代表の岩崎裕美子氏はこう語る。

深夜残業に明け暮れた日々

長時間労働しなくても会社は成長できる――。深夜残業に明け暮れた過去の経験から、岩崎氏はこう確信しながら今の会社を作ってきた。

前職は社員20人ほどの小さな広告代理店の営業職。毎月売り上げのノルマが課せられていた。新規開拓のため電話でアポイントを取り続け、昼は営業、夜は企画書作成に追われる。終電帰りが当たり前の毎日だった。でも、地道にコツコツとその仕事を続けていると売り上げは着実に上がっていく。

やりがいはあった。給料も悪くなかった。会社設立から7年間で売上高は20億円を超えた。ただ、周りの社員は次々辞めていく。続かないのだ。もう限界というところまでがんばって前月比100%の売り上げを達成すると、次の月にはさらにその120%を求められる。やがてパタリと倒れてしまう。

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