そんな会社で唯一の古参社員となっていた岩崎氏は、なんとか社員が早く帰れるようにあれこれ施策を打った。社長に提案してノー残業デーを作ったこともある。ところが、課せられたノルマを変えないまま「残業するな」と言われても社員は反発するだけだ。
「テレアポして提案に出向く」という仕事の仕組みを変えようと試みたこともあった。が、目の前の仕事に追われて誰にも新しいことを考える時間がない。そもそも社長自身がその提案に消極的だった。売り上げを伸ばしてきた今までのやり方を変えることに不安を隠さなかった。
だったら「社員が辞めない会社」を自分で作ろう
社員が辞めない会社にしたい、せめて22時には帰れるようにしたい、仕事のやり方を変えたい……。何度も社長に掛け合ったが、会社も社長も変わらない。いよいよ自らも会社を出ることを決断したのは36歳のとき。「この会社が変わらないのなら自分で早く帰れる会社を作ろう」と化粧品通販の会社を起業する。
前職の部下だった日高由紀子さん(現ランクアップ取締役)と2人でメーカーを何社も回り、納得のいく製品を作った。小ロットで発注し、フリーペーパーの小さな広告枠から少しずつ販売を始めると、徐々にレスポンスが増え、やがてリピーターもついた。会社設立から2年目で単年度黒字化した。
売り上げは順調に伸びていき、4年目には自らも4カ月の産育休を取得した。5年目には社員20人ほどの規模にまで拡大。長時間労働は一切させない。就業時間は9時~18時。残業しても19時ごろにはみんな帰っているという会社になっていた。
ところが、だ。業績は伸びているのに会社にまったく活気がない。「業績はいい。早く帰れる。待遇も悪くない。それなのに社内の雰囲気が暗い。なぜなのかまったく見当もつかなかった。どうしたら明るい社風が作れるのか、コンサルタントや経営者の先輩に聞きまくりました」(岩崎氏)。
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