「頭ごなし命令」ばかりの昭和上司がオワコンな訳 相手を傷つけずに意見を変えさせるフレーズ
また、問いかけの効能は最新の動機づけ研究の1つである「自己決定理論」からも説明できます。「自己決定理論」とは、ロチェスター大学のデシ教授と共同研究者のライアンによって提唱されたモチベーション理論です。
この理論を要約すると、私たちのモチベーションは、自分で決めたという「自律性」、力を発揮できているという「有能性」、人や社会に貢献できているという「関係性」が満たされたとき、ピークに達し、より強い動機づけにつながるというもの。
「自己決定」はやる気スイッチのような働きをし、私たちは同じことをするにしても自分の意思で決めたことのほうが意欲的になるのです。
ですから、相手に再検討したものの「最後は自分が決めた」と思わせる会話の流れがつくれれば、しめたもの。こちらが強く意見を打ち出さなくても、相手に提案を受け入れてもらうことができます。
この仕組みがわかっていると、たとえば、商談のときに取引先の担当者からあなたの提案への改善案が出たら、チャンスだと感じられるようになります。なぜなら、改善案を反映した新たな提案をすることで、相手の自律性、有能性、関係性が満たされ、担当者の商談そのものに対するモチベーションは自然と高まっていくからです。
なお、「結論保留モデル」は、相手の状況の理解度があまりにも低かったり、議論の内容が複雑で高度であったりする場合には使わないようにしましょう。理由は以下の通りです。
・状況の理解度があまりにも低そうな人の場合
→誤った結論にそのまま着地してしまう可能性あり
・議論の内容が複雑で高度な場合
→出てくる意見に大きな変化が現れず、新たな結論が出てくるまでに時間がかかってしまう可能性あり
これらの場合には、あなたの結論を明示したほうが得策でしょう。
ちなみに、相手が「その考え方で本当に大丈夫ですか?」と自分の結論は保留して、あなたに問いを投げかけてきたら、こう聞き返すことで対処できます。
「まずは○○さんの考えを聞かせていただいてもいいですか? その考えをもとに私も再度考えてみようと思います」
「ぜひ、○○さんのお考えを教えていただきたいです。それが大きなヒントになると思うのです」
このような返し方をすることで、相手は現時点での自身の結論を口にせざるを得なくなり、会話の主導権を取り戻すことができます。
最後に「結論保留モデル」であなたの提案を通すために役立つ、相手に投げかける鉄板の質問のパターンを紹介します。
・相手の意見に賛同・合意できないとき
→「その考え方で、本当に問題ないとお考えですか?」
・自分に代案がなくて相手に別案を出してもらいたいとき
→「もう少しいっしょに考えたら、(キミの)今の案を超えるもっとすごい案、出てきそうじゃない?」
・自分の頭で考えられる部下を育てたいとき
→「もし、それを実行したらどういう結果になるか何パターンか想像してから、もう一度キミの考えを聞かせてくれないかな?」
このような質問を事前に準備しておけば、相手のプライドを傷つけることなく、自らの意見や考えを再検討する会話の流れに巻き込んでいくことができます。そして、その流れの延長線上で出た答えには、あなたの望む要素が組み込まれていることでしょう。しかも、相手は自己決定した充実感とともに高いモチベーションで行動に移ってくれるはずです。
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