「敗者のGYAO!と勝者のU-NEXT」明暗分けた拠所 実は同じルーツ、時代に踊らされたサービスの歴史

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そもそもGYAO!を生み出したのは、有線放送事業者のUSENだった。2005年4月に「完全無料のブロードバンド放送」として、「GyaO」(当時の表記)を開始。当時USENは、音楽事業を手がけるエイベックスや、映画配給会社ギャガへの資本参加を行っており、「デジタルコンテンツプラットフォーム」構想の一環として、定着しつつあった常時接続による動画配信サービスに進出した。

GyaOは、どのネットワーク事業者や、インターネットプロバイダに契約していても利用できることをセールスポイントに、コンテンツに挿入されるCMやバナー広告、番組スポンサード、顧客プロフィールに基づくセグメント広告による収益を見込んでいた。

キラーコンテンツのひとつが、2006年11月スタートの「GyaOジョッキー」。平日夜の生配信番組で、アイドルやお笑い芸人と、視聴者がチャットで直接コミュニケーションできるのが特徴だった。この番組、当初は一般ユーザーからの番組企画も公募していた。実は、当時ただの高校生だった筆者もアイデアを投稿して、打ち合わせまで進んだのだが、結局のところ実現しなかった。真相は不明だが、最終的に「全員プロで行こう」となったのだろうか。

いま振り返ると、このエピソードがあった2006年の秋冬は、動画配信サービスにとって転換期だった。前年に誕生したYouTubeが11月、グーグルに買収された。そして12月には、ニコニコ動画がプレサービスを始めた。

このあたりを境に、ユーザー投稿型の動画コンテンツが好まれるようになる。当初は違法コンテンツの多かった投稿型サービスに対抗すべく、権利関係のしっかりした「公式配信」をアピールするも、受け入れられるまでには、想像以上に時間がかかったのではないか——というのが、ネット大好きアラサーである筆者の肌感覚だ。

「Yahoo!動画」から「GYAO!」へ

USENは2008年10月、GyaOを分社化。2009年4月にはヤフーの子会社となり、9月に「Yahoo!動画」とサービス統合された。そして2014年10月に、大文字の「GYAO!」へリニューアルされて現在に至る。

そんなGyaOの兄弟サービスとして、2007年6月に誕生したのが「GyaO NEXT(ギャオネクスト)」だ。当初はインターネットに接続した端末(STB)と、テレビを接続するもので、「完全無料」をうたったGyaOとは異なり、初期費用と月額使用料、端末代金(レンタルもしくは購入)が必要だった。

GyaO NEXTは、GyaOのヤフー売却後も、USENが持ち続けた。そして2009年12月、「U-NEXT(ユーネクスト)」に名称変更される。この事業は2010年12月に、子会社のU-NEXT社に承継され、同時にU-NEXT社の全株式を宇野康秀氏(当時USENグループ会長)へ譲渡した。

その後、U-NEXT社は2014年に、東証マザーズへ上場(現在は東証プライム)。2017年にはUSENと経営統合して、USEN-NEXT HOLDINGSとなり、現在に至る。いまではSTBなしで、パソコンやスマートフォンで、映像コンテンツを楽しめる。

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