ジュダノフ氏は「侵攻に投入された約20万人規模のロシア兵部隊のうち、約10万人が死傷した。このため、今後ロシア軍が兵力を増強しても戦場での経験不足は否めず、戦力は大幅にダウンする」と分析する。ジュダノフ氏によると、ロシア軍が兵力を増強する動きがあるものの、兵器・弾薬不足のため「新たな師団を編成できない」という。
東部ドネツク州の要衝バフムト攻撃などでウクライナ軍を苦しめ、正規軍と比べ比較的高い戦闘力を発揮した民間軍事会社ワグネルの部隊も戦力が急速に落ちているという。ジュダノフ氏によると、ワグネルが服役者から志願者を集めて編成した「受刑者部隊」は当初5万人規模いたが、その後は戦死者、脱走兵、あるいはウクライナ軍への投降などで減っていき、今では1万人規模となっているという。
しかも、攻撃作戦をめぐりロシア軍最高指導部内で大きな対立が発生する異常事態が起きていることもプーチン氏にとって懸念材料だ。それは、2023年1月末、ロシア軍空挺部隊のチェプリンスキー司令官が解任されたのだ。作戦会議の場でゲラシモフ氏を公然と批判したためという。
SNSに流れた情報では、チェプリンスキー司令官は大規模攻撃の柱として、首都キーウへの空挺部隊による急襲作戦を提案したゲラシモフ氏に対し、自分の部下をいたずらに死なせることになると大反対したという。
ロシア軍の大規模作戦は2月か
いずれにしても、大規模攻撃作戦の開始時期について、前ウクライナ大統領府長官顧問のアレストビッチ氏はまだ決まっていないとの見方を示す。「クレムリンでは2つの意見で対立している。早期に大規模攻撃作戦を始めて、並行して30万人を新たに動員する、という意見がある。もう1つはまず30万人を動員してから攻撃すべきという意見だ」と指摘する。
他方で、ウクライナ軍も2023年2月以降に大規模反攻作戦の開始を計画している。ゼレンスキー政権としては、領土奪還とロシア軍に侵攻継続を断念させるために、2023年夏の戦場での決定的勝利と今秋での事実上の戦争終結を目指している。「最後の戦い」がウクライナ政府内での合言葉になっている。
この流れの中で今回決まった米欧からの大量の武器支援のうち、アメリカ軍主力戦車エイブラムス31両について、アメリカ政府はウクライナに到着する時期を曖昧にしており、実際は早くても2023年末になる可能性もある。ドイツ側はレオパルト2戦車については3~4カ月かかるものの、一部は3月末には届く可能性があるとしている。
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