皮肉にも、この新料金プランが業績を圧迫しました。想定以上に新料金プランへ移行した人が多く、音声収入を大幅に落としたのです。これが、利益率を悪化させた要因となっています。
なぜドコモのキャッシュフローのマイナス幅が増えたのか
携帯電話の販売数や、サービスの契約数自体は前年同期を上回っていますから、この期の減益は、新プランによる利益率の低下が直接響いたと言えます。
続いて、キャッシュフロー計算書(同21ページ)を見てみましょう。注目したいのは、財務活動によるキャッシュフローです。前の期はマイナス2709億円だったのが、この期はマイナス5220億円まで増えていますね。
この理由は、「自己株式の取得による支出」が増えたことです。前の期は計上されていなかったのが、この期はマイナス3696億円となっています。
なぜ、ドコモは自社株買いを進めたのでしょうか。元々、「ROE(Return On Equity=自己資本利益率)」という指標を高めるためではないかと思います。元々、同社はROEを高めるための対策を進めていましたが、昨年からこの指標が特に注目されるようになり、自社株買いをすることでROEを押し上げようとしているのかもしれません。
昨年8月、経済産業省が発表した通称「伊藤レポート」で、「グローバルな投資家から認められるためには、最低限8%を上回るROEを達成する必要がある」と提言されました。それをきっかけに、基準に達していない多くの企業が、ROEを上げるために動き始めたのです。
ROEを高めるためには、大まかに3つの手段があります。利益率(利益÷売上高)を上げるか、資産回転率(売上高÷資産)を上げるか、自己資本比率(純資産÷資産)を下げるか。利益率や資産回転率を上げることでROEを高めることが理想ですが、中には自社株買いなどによって自己資本比率を下げて、ROEを上げようとする手法もあるのです。
ドコモのように高い自己資本比率を持つ企業では問題はありませんが、自己資本比率の比較的低い企業の場合には安全性を損なうことになりかねませんから、注意が必要です。
ドコモの場合は、先ほども触れましたように、自己資本比率が76.1%と非常に高い水準で、ROEは純資産の大部分を占める株主資本に対する利益率ですから、それが低くなりやすい傾向があります。2014年3月の時点ではドコモのROEは8.4%であり、先ほどの水準をギリギリ達成している状況です。
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