ソフトバンクとNTTドコモを分析する 今後の展開が見えない携帯キャリア2社

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同社の損益計算書(26ページ)によると、売上高は前の期より41.0%増の6兆4311億円。スプリントを買収したのは2013年7月ですから、今期はその業績がフルに合算されているため、売上高が大幅に伸びているのです。

アリババ上場で潤ったが、依然Tモバイルが重荷に

同様に、売上原価と販売費及び一般管理費も増えたことで、本業の儲けである営業利益は16.2%減の7880億円となりました。

この理由は二つあります。一つは、スプリントの人員削減に伴う費用などが嵩んだこと。もう一つは、前年同期にはガンホー・オンライン・エンターテイメントとウィルコムを子会社化したことによって一時益を計上していましたが、その反動が出たということです。

ただし、「持分変動利益」が15億円から5998億円まで大幅に伸びているため、最終利益である純利益(被支配持分を含む)は18.8%増の6407億円となりました。アリババ上場に伴って、同社が新株を発行し、利益が計上されたのです。

純利益は伸びましたが、売上高から営業利益の動きを見ていると、スプリントがお荷物になりつつあると言えます。

先ほども触れましたが、ソフトバンクは鳴かず飛ばずのスプリントの収益力を上げるために、昨年、Tモバイルの買収を試みました。携帯電話事業は装置産業ですから、同業会社を買収すれば基地局を共有できますし、プロモーション費用も削減できますから、収益力を高めることができるのです。

ところが、この買収は失敗に終わりました。収益力が弱いままのスプリントにどう対応していけばよいのかが、今もソフトバンクの課題となっています。
  
 ただ、全体から計算した「売上高営業利益率(営業利益÷売上高)」は12.3%という非常に高い水準になっていますから、収益的には今のところそれほど大きな懸念材料にはならないと思います。

続いて、安全性を見ていきます。貸借対照表(24~25ページ)から、短期的な安全性を見るための指標「流動比率(流動資産÷流動負債)」を計算すると、118.2%。一般的に120%以上あれば安全水域と判断されていますから、まずまずの水準です。

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