日本人は奨学金制度の「貧弱さ」をわかってない 貸与中心は世界の非常識、背後には構造的要因
ただ、そういった報道が目立つように感じる反面、延滞率は1.3%程度(※該当人数で計算した場合)で、奨学金を借りた人のほとんどは奨学金に助けられており、毎月しっかり返済していています。そういった人たちのほうが圧倒的に多いのです。また現在、政府は就学支援の拡充を予定しており、所得制限の緩和や「出世払い」できる奨学金の導入が予定されるなど、学生を取り巻く環境も少しずつですが確実に改善されていっています。
自己投資という観点を広めることが大切だ
貸与型奨学金の場合、借金であるというのは確かにその通りですが、「自分の将来のための適切な投資」と長期的に捉えることもできます。しかし、「奨学金を活用して進学した場合」「奨学金を活用しない場合」を冷静に比較・検討したうえで、将来の自分への投資として奨学金を活用しようという発想をする日本の学生はごく限られてしまいます。それは親もそうなので当然の流れかもしれません。
そういう意味ではアメリカでは、小学校から金融教育を受けていて「投資」という観点を学んでいるので、進学を「自分への投資」と考えやすいかもしれません。最近は日本でも、高校での一部投資などの授業を始めるなど、金融教育の動きが出てきましたが、浸透していくにはまだ時間がかかりそうです。
また、アメリカでは企業側も「学生への投資」「採用への投資」という考えがあります。
例えばAppleやMicrosoftなどアメリカの大手企業には「インターンなど採用を絡めた給付型奨学金」があります。1~2年生の段階でインターンをして内定が出た学生に対し、3~4年の学費は企業が全部出すような仕組みです。日本人的な感覚でいうと「露骨」と感じる人もいるかもしれませんが、選択肢の1つとしてこのような奨学金があることは学生の可能性を増やしてくれるでしょう。
このように、今の日本の奨学金市場において、「今ある情報を一元化・整理して必要な人に届くようにすること」「奨学金に対する悪い・怖いイメージを払拭して、利用する学生が客観的に判断できるようにすること」がまず重要です。奨学金情報を的確に届けてこそ、冷静に判断できるリテラシーが育くまれるのだと思います。そのうえで、給付型奨学金の数、総量を増やしていくことが必要でしょう。そこにも大きな課題があるのですが、それは次回の記事で紹介します。
(構成:横田ちえ)
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