チャンスを掴む人が実践する「たった1つのコツ」 茂木健一郎氏と考える、セルフコントロール力

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だからTwitterの1%のリスナーの反応を「参考にする程度」ならいいのですが、あまりにもその意見に合わせた番組づくりをしてしまうと、99%のリスナーが逃げてしまうというわけです。これこそ、情報に過敏すぎてはいけないという好例ではないでしょうか。

何か動き出そうとするときに動けない。実行力に欠ける。そういう人は、情報や他人の目、世間体に敏感に反応しすぎていて、「自分の内なる声」に反応できなくなっているのかもしれません。他人の評価を気にしすぎて自分らしさを大事にせず、本来の自分らしさを押し殺してしまうのはもったいないことです。

「絶世の歌姫」と思い込んで起きたこと

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これは映画にもなった実話なのですが、ニューヨークの社交界のトップに歌うことが大好きなフローレンス・フォスター・ジェンキンス(1868〜1944)という女性がいました。

マダム・フローレンスと呼ばれていた彼女は自分自身を絶世の歌姫だと思い込んでいて、実は音痴でそれに気づいていないのは自分だけ。それでも、夫の協力を得ながらソプラノ歌手になって音楽の殿堂であるカーネギーホールで歌うという夢を叶えたのです。

もし、マダム・フローレンスが「どうせ私は歌が下手だから……」と世間の目ばかり気にしていたとしたら、カーネギーホールで歌うことなどできなかったでしょう。ある意味での「鈍感力」が彼女をカーネギーホールのステージに立たせたのです。

一歩踏み出せない、そんな人はセルフコントロールしながら、あえて鈍感力を発揮することにチャレンジしてみてください。

茂木 健一郎 脳科学者

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もぎ けんいちろう / Kenichiro Mogi

1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』など著書多数。

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