家が売れないと嘆く人が知らない「業界の裏事情」 公平性に乏しい「不動産の商習慣」再考が必要だ
そもそも不動産仲介会社は、「不動産の売買、仲介」を行う点において長けている。もちろん、不動産の売買には欠かせない知識だ。しかし、不動産取引には多くのルールが存在する。弁護士や税理士の助言をあおぎ、さまざまな面に配慮する必要もあるのだ。
また物件そのものの価値について理解するには、建築士のような建物の設計、工事管理の知識を持つプロの助言も欠かせない。中古なら表面上ではわからない内部について住宅診断(ホームインスペクション)などを実施しなければならないケースもあるだろう。
売主の現状を俯瞰し、場合によっては「売らない」という選択肢を含め、問題解決への取り組みを進める、そんな「不動産エージェント」を介した取引が今後は求められていくように感じている。
流通性が低い日本の不動産市場
日本の不動産における問題点といえるのが、市場における流通性の低さだ。さくら事務所のグループ会社である「らくだ不動産」会長の長嶋修と代表の大西倫加が刊行した共著『悩める売主を救う 不動産エージェントという選択』(幻冬舎メディアコンサルティング)でも紹介しているとおり、海外では中古取引がメインとなっている。アメリカは取引全体の8割近く、イギリス(イングランドのみ)も85%、フランスは7割近くを占める。
翻って日本では、新築が85.5%、中古が14.5%(共に2018年のデータ。国土交通省、2020年調査)と圧倒的に新築が多くなっている。
またアメリカでは不動産売買に際し売主、買主それぞれがエージェントを立てて交渉するのが一般的であり、両手取引は禁じられている。当然ながら、エージェントは厳しい審査をクリアした人間のみが担え、高い倫理性が担保されている。不透明な日本の不動産取引とは明確に異なるのだ。
これまでの日本の不動産業界は「囲い込み」「おとり広告」などの手法が見過ごされてきた。不動産仲介会社の利益を上げることが最も優先されてきたからだ。売主に不利益が生じても見て見ぬふりをするのが慣例となってきた。
不動産エージェントの存在意義は、売主の課題解消に寄り添いながら、共に考えることにある。「囲い込み」等を行わず、公正なやり方で迅速に売買を進めるだけで、結果的に高値での売却を実現できるのだ。買主にとっても理想の物件が手に入る。売主、買主双方が笑顔になれるのが本来の不動産売買のあり方だと思う。
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