ルンバ開発者が狙う、次世代ドローンの姿 オバマも一目置く女性起業家の次の一手

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アイロボットは、ロボット会社としてベンチャー・キャピタルから資金を調達するまで8年、IPOを成功させるまで15年もかかっている。その間、軍事用のロボット開発でくいつなぎながら、赤ちゃんロボットなどの消費者向けロボットの開発に挑むが、なかなか実を結ばない。

最初の5年間は、給料日に銀行に残金があったことがなかったという。グレイナーの役割は、支払い日になると部品を納入する業者に電話をして、「もう少し待って下さい」と告げるものだったという。

軍事用から、家庭用へ

だが、そうして成功を収めたアイロボットでの経験は、グレイナーを稀な経験を持つロボット開発者にした。だからこそ、産業ロボットではなく、ドローンというこれまでにない分野に、彼女は敢えて挑んでいるのだ。ドローンは、「ロボット技術開発のロジカルな次のステップ」と彼女は語っている。

アイロボットも最初は軍事用のロボットの開発から始まって、後になって一般消費者向けのロボットを開発した。サイファイ・ワークスも、軍事用ロボットだけを狙っているのではなく、いずれアマゾンが目論むような配送用ロボットも照準に入れている。

またもっと先には、家庭内でモノを運ぶドローンもあり得るという。いろいろな障害物のある家の中では、スムーズに歩いたり走行したりするロボットを作るのは難しい。その代わりに飛ぶロボットだったらどうか。そんなことも考えているようだ。

サイファイ・ワークスのヘレン・グレイナー(写真は本人のツイッターより)

グレイナーは、11歳の頃に観た『スターウォーズ』の映画でロボットにくぎづけになった。ユニークなキャラクターを持つR2D2のようなロボットが欲しいと熱狂した。彼女はプリンセス・ライラヤハン・ソロではなく、ロボットに憧れたのだ。

もとよりコンピュータが好きで、幼い頃から近くのコンピュータ・ショップで開かれていたクラスに参加していた。マサチューセッツ工科大学では、機械エンジニアリング、コンピュータ科学を学び、その後NASAのジェット推進研究所やマサチューセッツ工科大学の人工知能研究所で仕事もした。

グレイナーは昨年、ホワイトハウスからグローバル・アントレプレナーシップのための大統領指名アンバサダーに任命された。アメリカの起業家精神を広めるために指名された10数人の1人としてである。サイファイ・ワークスは、ベンチャー・キャピタル会社からの資金も調達した。彼女は、ドローン技術の今後を大きく左右する起業家だろう。

気負いもなく、真に自分の関心を追求する聡明で行動力のある女性科学者。グレイナーは、まさにそういう人物だ。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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