無人攻撃機ドローン、その秘密の開発史とは? 必要は発明の母、戦争は必要の母である
CIAの本部ラングレーに設けられたトレイラーハウスのような仮設の建物。その中では、CIAの無人攻撃機(ドローン)の操縦士たちが、スクリーンを見ながら、地球の裏側の標的を上空から追っている。
ビン・ラディン暗殺作戦を描いた映画「ゼロ・ダーク・サーティー」などでも重要な役割を果たした無人攻撃機(ドローン)。
1970年代にイスラエルで生まれ、90年代のボスニア戦争でその姿をあらわし、2000年代に入ってパキスタン、イエメン、アフガニスタンなどで、アルカイダの指導者やイスラム過激派の幹部を次々に、搭載するヘルファイアミサイルで暗殺するまでに進化した「ドローン」の秘密の開発史が出版され、話題を呼んでいる。
米国で昨年出版され、日本でも2月21日(土)に発売になった『無人暗殺機 ドローンの誕生』(リチャード・ウィッテル著 赤根洋子訳 文藝春秋刊)がそれだ。
本稿は、元外務省主任分析官の佐藤優氏が当該書によせた解説全文。インテリジェンス時代のイスラエルの友人から、イスラエル製ドローンの代理店にならないかと持ちかけられたこともあるという佐藤氏。同氏の分析によると、ドローンの進化はやがて中国の空母戦略を無力化する可能性があるという。(編集部)
インテリジェンス専門家の第二の人生
私は、外交官時代、対ロシア外交とともに情報(インテリジェンス)と調査分析の仕事も担当していた。どの国でも外交官は定年が遅く、60代後半でも現役という人が多い。それに対して、インテリジェンスの世界の定年は早い。1960年生まれの私は今年で55歳になるが、現役時代に付き合っていたインテリジェンス専門家たちは、私よりも5~10歳、年上なので、ほぼ全員が現役を退いて、第二の人生を楽しんでいる。
もっとも、俗世間のことからはいっさい離れて、ガーデニングや絵画に没頭しているという、スパイ小説に出てくるようなタイプの人はいない。現役時代の得意分野を生かして、第二の人生を楽しみながら、そこそこの小遣い稼ぎをしている。イスラエルの友人から、「あなたも外務省との縁が切れたことだし、1日中、机に座っている作家なんて退屈だろう。もう少し広い世界を相手にして仕事をしないか」と誘われたことがある。そのときこんなやりとりをした。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ビジネスの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら