無人攻撃機ドローン、その秘密の開発史とは? 必要は発明の母、戦争は必要の母である

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100年後になって21世紀初頭を振り返ってみるとUAV時代の幕開けを宣言したことがブッシュ大統領の最大の業績になるかもしれない。UAV戦闘機が実用化することによって、日本の安全保障環境も大きく変化すると思う。前出のイスラエルの友人がこんなことを言っていた。

「日本人は中国による航空母艦建造に対してなぜあれほど神経質になっているのだろうか。航空母艦はメインテナンスが必要になるから1隻だけで運用することはできない。故障のことを考えると3隻は必要だ。中国が航空母艦を3隻造るのに最低あと5年はかかる。さらに発着艦ができるパイロットを養成するのに3~5年が必要になる。中国が機動部隊を展開する10年後には、UAV戦闘機が実用化しているだろう。そうなると航空母艦は単なる標的に過ぎなくなってしまう。このような無駄なことに中国が予算と人員を割いているのは、日本にとって悪いことではないと思う。中国が、航空母艦のような旧時代の遺物に関心を向けず、その分のカネとエネルギーをサイバー兵器、潜水艦、UAV戦闘機の開発に集中したら、日本にとってずっと面倒なことになると思う」

人間の生き方を変えるかもしれない

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確かにこのイスラエル人の言う通りだと思う。日本政府も日本国民も、軍事技術の発達を等身大で受け止めなくてはならない。その意味で、著者リチャード・ウィッテルの以下の指摘が重要だ。

<無人機革命に関して確実に言えることは二つだけだと思われる。

一つ目は、無人機というこの新技術は定着するだろうということである。

二つ目は、無人機が引き起こす影響にどう対処するか、その方法を社会は見つけ出さなければならないということである。

かつて自動車が馬に取って代わったとき、道路交通法や信号や車道が必要になった。飛行機が発明されたとき、新しい法律や規則や空港や航空局が必要になった。軍事目的で開発されたある技術が、二十世紀から二十一世紀の変わり目に急速に成長し始め、その影響が及ぶ範囲は拡大を続けている。無人機技術はすでに人間の死に方を変えた。それはいつか、人間の生き方を変えるかもしれない>(385頁)

本書は、UAVについて日本語で読むことができる最良の作品だ。ひとりでも多くの人が手にとって読んで欲しい。

(2015年1月3日記)

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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