週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場

「日銀は市場に負けた」と言う人の根本的な間違い 日銀の金融政策変更は「次回3月会合」が濃厚だ

11分で読める
  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
2/6 PAGES

もう少し正確に言えば、目的関数が違う行動主体が対峙しているにもかかわらず、トレーダーの側はその違いを考えずに同じゲームを戦っていると勘違いしているのだ。

自分の行動原理以外、考えられない。自分勝手に相手の行動を決めてかかっているのである(実際は、それは妄想にすぎないのだが)。

本来、中央銀行はギャンブルができない

一方、日銀はもちろん相手の行動原理を考えて行動しており、それを制約条件として受け入れ、自分たちの本来の使命に邁進する。だから、金銭的な損をしたり、メディアに叩かれたりしても、それらは気にしない(正確には、甘受するということか)。

彼らとしてうまくその目的を達成できるかどうかはわからない。だが、トレーダーほど相手にも自分の行動原理を押し付けることはしないのである。

それでも、多くの場合、中央銀行がトレーダーに負けてしまうように見えるのは、トレーダーたちの行動原理はわかっても行動心理がわからないからである。とりわけ、中央銀行の行動原理をまったく理解していない(理解しようともしない)ことが、理解できないからである。

もう1つは、トレーダーたちは多数いるので、それが束になってかかってきて、何人も何度も討ち死にしても(しょせん他人のカネの運用で、その他人(ファンドの出資者など)のカネが討ち死にするだけだから)、何度でも戦える。

中央銀行は一度負けたら終わりである。金融市場が壊れたら終わりである。だから、一度も負けられないから、ギャンブルはできない。普通は。2013年の異次元緩和が成功したのは(トレーダーとの戦いとしては)、中央銀行がギャンブルをいとわずしたからである。

ちなみに、日銀が市場に負けたというのは根本的な間違いである。メディアで「市場」とか「市場の声」というのは、トレーダーの集団、束、塊のことである。

日銀は金融市場を守るためにある。日銀と市場は一体なのである。市場と戦っているのはむしろ、トレーダーたちなのだ。しかし、それをトレーダー自身が間違って理解していて、自分たちが市場を支配している、いや自分たちが市場そのものと勘違いしているから、市場はおかしくなる。市場がおかしくなるのは、すべてトレーダーたちのせいなのである。

次ページが続きます:
【日銀は何のために存在しているのか?】

3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象