「日銀は市場に負けた」と言う人の根本的な間違い 日銀の金融政策変更は「次回3月会合」が濃厚だ

✎ 1〜 ✎ 152 ✎ 153 ✎ 154 ✎ 最新
拡大
縮小

もう少し正確に言えば、目的関数が違う行動主体が対峙しているにもかかわらず、トレーダーの側はその違いを考えずに同じゲームを戦っていると勘違いしているのだ。

自分の行動原理以外、考えられない。自分勝手に相手の行動を決めてかかっているのである(実際は、それは妄想にすぎないのだが)。

本来、中央銀行はギャンブルができない

一方、日銀はもちろん相手の行動原理を考えて行動しており、それを制約条件として受け入れ、自分たちの本来の使命に邁進する。だから、金銭的な損をしたり、メディアに叩かれたりしても、それらは気にしない(正確には、甘受するということか)。

彼らとしてうまくその目的を達成できるかどうかはわからない。だが、トレーダーほど相手にも自分の行動原理を押し付けることはしないのである。

それでも、多くの場合、中央銀行がトレーダーに負けてしまうように見えるのは、トレーダーたちの行動原理はわかっても行動心理がわからないからである。とりわけ、中央銀行の行動原理をまったく理解していない(理解しようともしない)ことが、理解できないからである。

もう1つは、トレーダーたちは多数いるので、それが束になってかかってきて、何人も何度も討ち死にしても(しょせん他人のカネの運用で、その他人(ファンドの出資者など)のカネが討ち死にするだけだから)、何度でも戦える。

中央銀行は一度負けたら終わりである。金融市場が壊れたら終わりである。だから、一度も負けられないから、ギャンブルはできない。普通は。2013年の異次元緩和が成功したのは(トレーダーとの戦いとしては)、中央銀行がギャンブルをいとわずしたからである。

ちなみに、日銀が市場に負けたというのは根本的な間違いである。メディアで「市場」とか「市場の声」というのは、トレーダーの集団、束、塊のことである。

日銀は金融市場を守るためにある。日銀と市場は一体なのである。市場と戦っているのはむしろ、トレーダーたちなのだ。しかし、それをトレーダー自身が間違って理解していて、自分たちが市場を支配している、いや自分たちが市場そのものと勘違いしているから、市場はおかしくなる。市場がおかしくなるのは、すべてトレーダーたちのせいなのである。

次ページ日銀は何のために存在しているのか?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT