さらに言えば、すべてのトレーダー、投資家、潜在的な投資家をすべて含めれば、それは市場である。それこそが市場である。
トレーダーたちは、暴れようとしている(あるいは暴れている)自分たちが市場のほぼすべてだと勘違いしているところが問題で、さらに問題なのは、ギャングが無法地帯を支配するように、誰も近づかなくなると、実際、市場は暴れているトレーダーたちに支配されているように見えてしまい、トレーダー自身が「俺がおきてだ」と思い込んでしまうところが問題なのである。
さて、日銀の目的は何か。正しい金融政策をすることである。正しい金融政策とは何か。日本経済の発展を助けることである。どうやって? 通常のときは、物価の安定を通じて、経済の健全な発展に資する、ということである。では、通常ではないときは? それはそのときの状況に合わせて、日本経済の健全な発展に資するのである。
デフレマインドの解消が日本経済の発展のために最重要であると判断すれば、それが目的となる。その判断が正しいか間違っているかは別の問題である。
日銀総裁として無能として叩かれようが非難されようが気にせず(実際に気にしないのが、大物総裁である)、目的のために自分のそして組織の判断を行い、実行するだけだ。
白川方明・前日銀総裁の回顧が「必読」なワケ
たとえば、『週刊東洋経済』の1月21日号は「日銀特集」だが、白川方明前総裁が渾身の回顧を寄稿している。トレーダーたちも読んでみるといい。政策担当者としての矜持というものを学んだほうがよい。しかし、彼らは読んでも理解できないかもしれない。自己の損得以外は考えられないという職業病に陥っているからだ。
そういう彼らのためにアドバイスするとすれば、日銀は別の目的があり、その目的の達成という制約条件に縛られているから、日銀をやっつけて自分が儲けたいのであれば、「彼らの今の最優先の目的、すなわち、彼らの制約条件や弱みは何か」ということを考えるゲームに切り替えてみろ(損得だけの単純なゲームでなく)、ということだ。
では、日銀の最大の制約条件とは何か。通貨の信任である。だから、それが危うくなるような状況には追い込まれないようにする。それが危うくならない限り、経済の健全な発展にすべてを尽くす。
注意しなければならないのは、リーマンショックのような金融市場の崩壊的な危機や、金融機関の連鎖的な破綻危機などに直面しない限り、株式市場自体が目的関数に入ることはないことだ。
ここは、投機的なトレーダーだけでなく、株式市場などに毒されたいわゆるマーケット関係者は永遠に理解しないところだ(実際は、理解したくない。なぜなら、自分たちは日銀からは無視されていると認めることになるからだ)。
だが、金融市場はあくまで経済の健全な発展の手段であり、それを阻害する最大の要因になる場合があるから、日銀は金融市場、金融機関を守ろうとするのである。いわゆる金融恐慌は全力で防ぐのであり、そうならないように予防的な措置をとるのである。
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