ブラックサンダー「30→35」値上げが理解集めた訳 硬軟織り交ぜたPRが好意的な反応につながった
社会課題に取り組む姿勢も
ここまで紹介してきたユーモラスなPR戦略のみならず、社会課題に取り組む姿勢も見せている。チョコレート業界では昨今、原料となるカカオ豆の生産環境が問題視されている。多くの子どもたちが、児童労働に従事していて、人権が軽んじられていると指摘されているのだ。
そんななか、有楽製菓は2020年から、自社製品の一部で、児童労働撤廃に取り組む原料を使用開始。生産地を支援する「スマイルカカオ」プロジェクトを立ち上げた。そして、2022年にブラックサンダーに使用するカカオ原料を「スマイルカカオ」に切り替え、2025年までに同社が使うカカオ原料も、すべて切り替える目標を掲げている。
国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」では、2025年までに、あらゆる形態の児童労働を撲滅する方針が示されている(目標8.7)。教育の機会を奪ってしまう児童労働への懸念は、欧米諸国ではスタンダードになりつつあるが、国内企業では先進的な取り組みと言える。
なお原料切り替えにともなって、価格改定は行われなかった。朝日新聞デジタルは、2023年1月17日配信の記事で「児童労働撤廃の対策に伴うコストは、今回の値上げには含めていないという」と報じている。
こうした背景を知っている消費者からは、「経営理念に賛同する消費者は値上げしても理解してくれるよ」「値段が上がっても食べるよ」といった反応も見られる。これも、日頃の発信の成果といえるだろう。
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