NHKが絶対に死守したい「受信料ビジネス」の全貌 「強制サブスク」と化す公共放送のまやかし

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ただし疑問は拭えない。NHKが国民からの受信料を財源にするのは、政治権力や資本など特定勢力におもねらない放送をするためだ。だが、この「独立性」という建前を信じている人がどれだけいるのか。

元NHK政治部記者である立憲民主党の安住淳・国会対策委員長は、予算審議の時期にNHKの理事や幹部が政治の側に気を使うのは「当然」としつつ、「それでも毅然として放送できなければ公共放送とはいえない」と指摘する。

「NHKの『日曜討論』には各党の政調会長や幹事長が招かれることが多いが、国対委員長が招かれることはほぼない。自民党の国対が出演に消極的であることをNHKが忖度しているからだ」

安倍政権以降、自民党は国対委員長が日曜討論に出ることを渋るようになり、NHKはそれを受け入れてきた。結果として国対委員長の討論は実施されないままだ。

受信料値下げもしかり。NHKが値下げを公表したのは2021年1月、菅義偉首相(当時)が施政方針演説で「月額で1割を超える思い切った引き下げ」に言及した直後のことだった。前田晃伸会長は値下げを「衛星契約のみ」にとどめようとしたが、武田良太総務相(当時)や総務相経験者が主張する「地上(波)も値下げで」で、一気に押し切られてしまった。

経営の根本に関わる受信料の額まで政治の意向に従うNHKが、独立した公共メディアといえるだろうか。

「ビジネス」化する受信料

NHKが2022年度下期から強調する営業活動の方針は「共感・納得」だ。受信料制度を「強制サブスク」と感じる人に対し、受信料の本来の目的をいかに説得するかが、制度維持には欠かせない。

しかし、公共メディアとして今後何をし、何をしないのか。維持していくにはいくら必要なのか。そういった根本的な説明をNHK自身が避けてきた。

50代のベテランディレクターは「公共の範囲はどこまでか、受信料はなぜ必要なのかといったNHKの根本に関わる話を、NHKはあえて説明しない戦略を取ってきたように思える」と言う。

説明せずとも、政府や与党政治家の意向にさえ逆らわなければネット受信料という新たな収益源を入手できる──。もしNHKがそう考えているのだとしたら、もはやそれは公共放送と呼べず、単なる「受信料ビジネス」でしかないだろう。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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