NHKが絶対に死守したい「受信料ビジネス」の全貌 「強制サブスク」と化す公共放送のまやかし

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元経営委員の上村達男・早稲田大学名誉教授は、「経営委員は本来、与野党の同意を得て選出されるのが慣例だ。こうした国会同意人事は政府任命人事とは異なる。政府から独立した機関の人事だからだ。それを政府は区別できないでいる」と指摘する。

予算が審議される時期にNHK内ではびこるのが、政治、とりわけ政権与党への忖度(そんたく)だ。「この時期に政権批判はまずい」「おとなしくしていてくれ」といった声が現場に下りてくることがあると、複数の職員が証言する。

安倍官房副長官(当時)がNHKの国会担当理事を呼び出し、戦時性暴力を扱ったETV番組に苦言を呈し、番組改編が起きたのは、2001年の1月、予算審議が始まろうとしているときだった。

選挙は災害と並ぶ2大ミッション

もう1つ、国会議員とNHKが親密になる最大のイベントが選挙だ。NHKの報道にとって選挙は災害と並ぶ2大ミッション。大量の人員と予算を割き、どのメディアよりも選挙報道に血眼になる。

開票日、NHKが当選確実を出すまで候補者は万歳三唱しないことが不文律になっているほど、国会議員はNHKの情報を信頼している。日頃から、NHK政治部記者と選挙情報をやり取りしている国会議員も少なくないとされる。

NHKの理事や政治部記者が国会議員に良質な情報を提供するために、現場の記者たちは血眼になって取材に奔走しなければならない。NHKでは2013年に31歳の記者が、2019年には40代の管理職が過労死した。亡くなったのは、いずれも選挙取材の後だった。

「当確を民放より1分でも早く打つためだけに、いったいどれだけの負荷を現場にかけるのか。過労死した2人の教訓はどこへ行ったのか」。30代記者はそう憤る。

だが国会議員との良好な関係を維持していくため、現場記者たちの膨大な業務は続く。

政治サイドの理解を得ながらNHKが近年力を入れてきたのが、受信料制度の補強だ。

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