NHKが絶対に死守したい「受信料ビジネス」の全貌 「強制サブスク」と化す公共放送のまやかし
昨年6月、総務省はローカル局を含む民放とNHKが放送インフラを共用できる仕組みをつくる方針を示した。これを受け、NHKの受信料がNHKの放送事業だけではなく全国の放送網維持のために使われることになった。
地域人口減少が著しいローカル局の経営は厳しい。総務省によると、在京キー局や在阪準キー局を除いたローカル局(ラジオ局含む)全体の営業利益は2015年に724億円だったが、2020年には170億円にまで落ち込んだ。2021年には495億円まで持ち直したもののジリ貧の状況は変わらない。
NHKも昨年秋、他メディアとの連携に700億円を投じると発表。NHKの業務肥大化に批判的だった民放連も、背に腹は代えられぬ形でNHKの支援を受ける。受信料はNHKだけのものではなくなった。
さらに受信料を国内の民放、ネット業者に広く使おうという動きも顕在化している。NHKに日本の動画コンテンツ産業をリードする役を担わせようとするものだ。
ネットフリックスやアマゾンプライムなど外資系動画コンテンツ企業の影響力が強まり、これまでグローバル競争とは無縁だったテレビが国際競争に巻き込まれている。
総務省の公共放送ワーキンググループ(WG)委員である、青山学院大学の内山隆教授(経済学)は「受信料をわが国の放送業界とネット映像配信業界の投資と公益のために使えるようにするべきだ。NHKがこうした業界を引っ張っていけるよう、受信料制度を変えていく発想が必要ではないか」と話す。
最大の論点がネット受信料
受信料制度をめぐる現在の最大の論点がネット受信料だ。NHKのネット事業を「補完業務」から「本来業務」へと格上げするための議論が総務省で進む。
受信料収入が6000億円を割り込むのが時間の問題となる中、NHKはテレビ放送を見ない人からも受信料を徴収できる仕組みを築きたい。ネットが本業化された場合、どのような形で受信料を徴収するのか。NHKは「ネットに接続できるというだけで、スマートフォンやパソコンから受信料を徴収することは現時点では考えていない」とする。
すべてのスマホ保有者から徴収する案は、公共放送WGでは否定的な声が相次いだため実現の可能性は低い。だが、WGではアプリをインストールした人から徴収する案や国民全員から徴収する案なども提示された。どの案になるにせよ、受信料制度そのものは強化されることになる。