「プラセボ効果で月に行けた」宇宙飛行士の顛末 かつての「大がかりな治療」、実はプラセボかも

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その効果をもたらす仕組みは純粋に心理的なもので、期待、注目されること、思いやり、提案などの要素から成る。プラセボが治療に役立つと考えられていた時期もあったが、やがてそれは間違いで、実用的な効果はごく限られていることが判明した。プラセボ療法の効果は有益な場合もあったが、大抵の場合は役に立たなかった。

たとえばホメオパシーの場合、医師と患者との関係は長引きがちだ。その関係は病気が治って終わるどころか、患者は効き目のない薬を繰り返し処方されるため、症状が長引いてしまう。ホメオパシーの最大の欠陥は、患者が徐々に慢性疾患患者として扱われるようになり、ごく普通の健康的な生活に戻るのが難しくなることだ。

プラセボ効果にはいくつかのルールがある。第1に、患者は効くと信じていなければならない。つまり治療法が偽物だと知っていてはいけない(または、知りたくない)ということだ。治療をする側も効くはずだと信じていると、効果はさらにアップする。

さらに、ある程度ものものしさと儀式張ったことがあればさらに効果的だ。つまり、外科手術は強力なプラセボ効果を発揮する可能性があるということだ。結局のところ、患者も外科医も手術が成功すると信じているからこそ、合併症に罹るリスクを冒してまで手術を断行するのだから。言うまでもなく、手術は錠剤や飲み薬よりもはるかに大掛かりだ。

プラセボ効果は、健康状態が悪いことでかなりの満足感を得ている人に対しては効き目が弱まる。たとえば、その問題のおかげで人々から同情されて、注目されることに喜びを感じている人だ。その反対に、治療が成功するとかなりの恩恵が得られる人には、プラセボ効果が強まることがある。

ある宇宙飛行士を襲った悲劇

1969年、アラン・B・シェパードが手術に同意したとき、彼以上に病気が治ることで得られるメリットが大きい人はいなかったのではないだろうか。シェパードは究極の冒険を担おうとしていたところに、ある病気に罹り、一生に一度のチャンスを逸するところだったのだ。

シェパードが宇宙飛行に成功した初のアメリカ人の一人となったのは、37歳のときだった。飛行時間はわずか15分だったし、彼の乗った宇宙船マーキュリー号がおこなったのは弾道飛行だったが、シェパードは少なくともアメリカで一時的に英雄としてもてはやされた。

実のところ、そのミッションは少々遅すぎた――ほんの23日前に、ロシアのユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行に成功し、1時間以上の地球周回飛行に成功したばかりだったからだ。

だがシェパードの飛行はもっと大きな冒険が始まることを予兆するものだった――月旅行だ。 マーキュリー計画のあとには、ジェミニ計画とアポロ計画が続いた。マーキュリー号に搭乗した7人の宇宙飛行士のうち、6人が月面着陸へと続く一連のミッションのなかで、何らかの役割を担った。

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