「マイレージのステータス」に秘められた賢い戦略 賢いマーケターは知っている「損失回避」の法則
賢いマーケターはこの心理を知っている。だから、設定したターゲットをクリアしたい気持ちに乗じたポイントプログラムを作るのだ。
ある研究で、航空会社のマイレージ・プログラムの会員があと少しで上級ステータスを獲得するときの行動を調べたところ、最上級ランクに近づくと飛行機の利用が増えることが確認された。
ところが、最上級ランクに必要な年間10万マイルという数字をクリアすると、その後の利用頻度は下がる。ターゲットをいったんクリアしたら、そこで「リセットした」という感覚を抱くからだ。
目指すステータスに近づくために距離を稼ぐのは重要に感じるのだが、あとは翌年のステータス維持のために貯めるだけとなると、さほど重要なこととは感じられなくなる。
マラソンでも、大会で無事に4時間切りのタイムを出せたなら、次の大会が近づいてくるまでは、日々の練習を必死にやろうという気は起きなくなる。
モチベーション管理の「TOTE」モデル
指標は人を引っ張るだけでなく、進捗を評価させることによって、目標への意欲をかきたてる。
1960年代に開発された目標追求モデルでは、目標を目指すことを、掲げた数字との不一致を埋める作業だと考えた。認知心理学の創始者の1人、ジョージ・ミラーは、「TOTE」と名付けたモデルを提案している。
ある意味で機械的にモチベーションを管理するモデルだ。目標値を設定したら、第1にその目標値までの距離を「調べる(Test)」。第2に、その目標に向けて「操作する(Operate)」。第3に、ふたたび目標値までの距離を「調べる(Test)」。この「調べる」「操作する」「調べる」のループを繰り返し、最終的に目標値に到達したら、目指す努力から「退出する(Exit)」(4つの頭文字をつなげてTOTEとなる)。
数十年が経つ現在でも、TOTEは目標追求モデルとして人気だ。何しろ要点がシンプルに整理されている。指標を決めたら、どれくらい遠い道のりであるか把握し、それから実際に努力をして、道のりを縮めていくというわけだ。
指標にパワーがあることを納得したら、次に知りたいのは、指標を賢く設定する方法だ。モチベーションサイエンスの研究が、優れた指標の条件4つを特定している。やや手ごわいものであること、測定可能であること、行動に移せるものであること、自分で設定したものであることだ。
(翻訳:上原裕美子)
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