「マイレージのステータス」に秘められた賢い戦略 賢いマーケターは知っている「損失回避」の法則

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指標を強調したくなる理由ははっきりしている。役に立つのだ。最終的な目標に向けて引っ張る力を発揮するし、進捗を把握しやすい。がんばりをやめるタイミング、減速していいタイミングもわかる。そして指標が意欲をかきたてる理由は、目指すべき数字が決まると、人はその正確な指標に合致することを重視するようになるからだ。

1万ドル貯めると決めたなら、「たった」9900ドルしか貯められなかったときには、失望感を味わう。そして1万100ドル貯められた場合には、きっかり1万ドル貯められた場合と比べて、とりわけ余計にうれしい気持ちにはならない。

目標をクリアしていないときには、足りない100ドルは大問題なのだが、クリアしているなら、はみ出た100ドルはたいして重要ではないのだ。

一般的に、指標が定まると、それ以下の数字は損失と感じられ、絶対に避けたい事態と思えてくる。反対に、設定した指標からはみ出す数字はボーナスのようなもので、あればうれしいが、心の平穏を獲得するにあたって必須というわけではない。

心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーは、この法則を「損失回避」と呼んだ。人間は、何かを取り逃がしたと感じるとひどく失望し、ときには怒りすら感じるが、期待よりも多めに獲得したときには、さほど気持ちが動かない。

この損失回避の法則があるせいで、指標を超えることよりも、ぴったり合致することのほうに、がんばろうという気持ちがわく。

「キリのいいタイム」を下回りたい

マラソンを例に考えてみよう。マラソン出場の目標は、究極的には、できるだけ速く完走することだ。しかし、実際に走るときにはたいてい特定のタイムをターゲットとして設定し、たとえば4時間以内に走ることが真の達成だと考える。マラソンランナー1000万人のデータを分析した研究では、大多数のランナーがキリのいいタイムをわずかに下回る時間で走っていることが確認された(たとえば4時間1分で走ったランナーよりも、3時間59分で走ったランナーのほうが多かった)。

ゴールラインが近づき、目指すタイムを破れそうだとわかると、そこから急に力を振り絞ってスピードを出す。最後の最後で、指標を確実にクリアしようと最大限の努力をするので、多くのランナーがキリのいいタイムよりもわずかに速く走り終える。

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