「ネズミ駆除対策」がかえって大量発生を招いた訳 「正しいインセンティブ」の設定は意外と難しい
ベトナムのハノイを襲ったネズミ問題
1900年代初期、ノミにたかられたネズミがペストの原因となることを科学者が発見してから数年しか経っていないという時期に、ベトナムのハノイは大規模なネズミ問題に頭を抱えていた。
フランス領である同市に建設された真新しい下水道設備で、ネズミが大繁殖していたのだ。いまや大群が姿を見せるようになり、疫病の再流行を懸念したパニックが起きた。
対策として、フランス人の役人たちは、ネズミを1匹殺したら1セント払うという報奨金プログラムを作った。当初はこれが奏功しているように見えたのだ。1カ月もしないうちに、1日に数万匹が駆除されるようになった。報奨金導入からたった2カ月後には、1日に2万匹以上のネズミが早めの死を迎えていた。
ところが、ハノイ保健当局の役人たちにとってはたいそう衝撃的なことに、即席のネズミ駆除業者たちは問題の上澄みに対処していただけだったのだ。しばらくすると、しっぽのないネズミが街中で数多く目撃されるようになった。報奨金を支払う際にはネズミのしっぽを提出させ、確かに殺したと確認していたのに、これはどうしたことなのか。
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