「ネズミ駆除対策」がかえって大量発生を招いた訳 「正しいインセンティブ」の設定は意外と難しい

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癌検診に引っかかったら祝杯をあげ、今年の初雪が降る前に暖房を修理しなければまずいとわかったら小躍りし、利己的な隣人に近づきすぎないよう注意してくれた友達にはお酒をおごってもいいのかもしれない。

対処できるタイミングで悪い知らせに気づけるというのは、祝う価値があることだ。インセンティブの影響力を最適化するためには、正しい対象――チームワーク、創造的なソリューション、被害の予防、地域社会に病気を蔓延させないこと(ネズミを殺すことではなく)――に対して報酬を出さなければならない。

インセンティブをチェックする2つの問い

当然ながら、正しくインセンティブを設定できているかどうか判断するのは、言うほど簡単ではない。

次に挙げる2つの問いを通じて、インセンティブの妥当性を考えてみてほしい。

第1に、そのインセンティブは目標に向けた進捗を促すだろうか。ただ測定しやすいだけで、あまり意味のない指標を掲げてはいないだろうか。

たとえば仕事でステップアップがしたいなら、パソコンの前に座っていた時間で自分をねぎらうのではなく、完成させた仕事の量に対して褒美を出すほうがいい(前者なら、白昼夢に浸っていた時間や、ソーシャルメディアをチェックしていた時間も含まれる)。

さらに一歩踏み込んで、仕事の量ではなく質に対して報酬を設定するのが理想的だ。

第2の問いとして、そのインセンティブを達成する一番簡単な方法を想像してみよう。どんな近道や抜け道があるだろうか。最短ルートが目標に貢献しないものであれば、間違ったインセンティブを設定している。

(翻訳:上原裕美子)

アイエレット・フィッシュバック 心理学者/シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授

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Ayelet Fishbach

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの受賞歴のある心理学者で、モチベーションサイエンス学会の元会長。100以上の科学論文を多くの心理学やビジネスの学会誌に発表している。人間のモチベーションについての革新的な研究により、実験社会心理学会の最高論文賞や、キャリア・トラジェクトリー・アワード、フルブライト教育基金賞などを受賞。フィッシュバック博士の科学的な発見は、『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォールストリート・ジャーナル』、CNN、NPRなどのメディアで頻繁に取り上げられている。

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