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仕事探しをしているなら、目標は「キャリアの機会を開拓する」と表現することもできるし、「求人情報を読んで応募書類を提出する」と表現することもできる。
2つは同じ目標の説明だ。「求人情報を読む」のほうは、新しいキャリアをつかむ方法を具体的に述べており、「キャリアの機会を開拓する」のほうは、求人情報を読む理由を概念的に述べている。
だが、同じ目標について語っているとはいえ、モチベーションを抱かせる効果には差がある。具体的な説明のほうは行動に主眼があり、タスクの達成を想定している。
概念的な説明は、そうした行動をする意味に主眼を置いている。概念的な目標は、行動の背景にある究極的な意図(パーパス)をとらえ、何をするかではなく、何を目指すかを語る。
その一方で具体的な目標は、目標に至るまでの道のり、つまりは手段を特定しているにすぎない。
概念的にものごとを考えられる思考回路を育てていけば、目標追求にあたって単なるタスク達成を目指してしまうことにはなりにくい。
自分の行動の究極的な意図や意味を考え、日常生活で概念的に思考する癖がついていると、目標を概念として広くとらえることができるのだ。
「なぜ」に答えることで意欲が増す
心理学者のフジタ・ケンタロウらがこの法則を実験している。
まず、被験者に「なぜ」を問う質問(概念的)か、「どのように」を問う質問(具体的)か、どちらかを与えて答えさせた。概念的な思考回路または具体的な思考回路に慣れさせるのだ。
たとえば前者の被験者は、「あなたはなぜ身体的健康を維持しているのですか」という問いに答える。後者の被験者は、「あなたは身体的健康の維持のために何をしていますか」という問いに答える。
一連の質問が終わった頃には、前者の被験者は目標に対して概念的な考え方をするようになった。後者の被験者は具体的な考え方をするようになった。そして、「なぜ」に答え続けていた前者の被験者のほうが、目標のために努力することについて、より意欲的になった。たとえば握力計を持たせると、彼らは一生懸命に力をこめた。
もちろん概念的な目標にも欠点がある。概念的すぎる目標は曖昧になるからだ。具体的な行動と結びつかず、それゆえに追求していくことが難しい。
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