ネット通販が「送料無料」を売りにする驚きの理由 消費者心理をうまく利用した印象操作のすごさ

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一般的に、人は手段ではなく目標に対して自分のリソースを投じたいと考える。企業は消費者が手段にお金を払いたがらないと知っているので、ネットストアではたいてい商品価格に配送料を含めることで、配送無料という印象を与えている。

手段への投資を忌避する傾向が、驚くほど大きな影響をもたらすことがある。手段に対する負担をこうむらないためなら(多くの人が送料の負担を避けるように)全体として損をしてもかまわない、とすら考えるのだ。

私はフランクリン・シャディとの共著論文で、MBAコースの学生を対象とした実験について考察している。この実験では、著名な経済学者リチャード・セイラーのサイン入り書籍をオークションにかけた。MBAの学生にとってはぜひ手に入れたいお宝だ。

平均入札価格は23ドルだった。次はトートバッグを出品した。中には先ほどと同じサイン入りの書籍が入っている。入札するのは別の学生グループだが、書籍に対する熱意は最初のグループと同等だ。名目としてはトートバッグに対して入札することになるが、最高額を入れれば書籍とバッグの両方が手に入るのだから、最初のオークションよりも経済的にお得な取引と言える。

ところが驚いたことに、トートバッグへの平均入札額はたった12ドル。書籍だけの出品に対する入札よりも大幅に低い。経済学的にはトートバッグは負の価値がある、つまり書籍をバッグに入れると価値が下がるという意味になる。

こんなおかしな結果になった理由は、無料の書籍を運ぶ役目しかないバッグに大金を払いたくない、という気持ちがあったからだった。手段にお金を払うのがいやなのだ。

「得られるもの」に視点を置く

あなたが目標を立てるときには、この考察を思い出し、コストよりもベネフィット(得られるもの)に視点を置いて目標を決定してほしい。「求職活動をする」ことではなく、「仕事を見つける」ことが目標だ。

住宅を買うなら、「頭金を貯める」ことが目標ではない。「家を所有する」ことが目標だ。仕事を見つける、家を所有するというのが、望んでいる結果である。

履歴書に記入したり、頭金を用意したりするのは、結果を導くためのコストを伴う手段だ。目標を満たすのは心が躍ることだが、手段を完了するのはタスクにすぎない。

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