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EV1400台導入のアストラゼネカ。「2045年ネットゼロ」を標榜し、取引先の温室効果ガス削減を支援。その本気度は?

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蓄電池ベンチャー・パワーエックスとアストラゼネカは、EV急速充電インフラの整備で連携する(2025年1月23日の合同記者会見。撮影:筆者)
イギリスに本拠を置く大手製薬会社アストラゼネカは「2045年温室効果ガス排出ネット(実質)ゼロ」という野心的な目標を掲げ、グローバルベースで削減の取り組みを加速している。
日本では営業用車両の7割に相当する約1400台を電気自動車(EV)に転換し、さらに100%化を目指す。医薬品原料の調達から患者に届くまでのバリューチェーン全体での温室効果ガス排出削減を進めるために、取引先への支援も強化している。アメリカを中心とした化石燃料回帰などエネルギーを取り巻く状況が複雑化する中、なぜ脱炭素化への手綱を緩めないのか。同社の先進的な取り組みをリポートする。

蓄電池ベンチャーのパワーエックスは2025年1月23日、アストラゼネカとともに東京都内で記者会見を開催し、2月から社用車向けEV充電プランの提供を開始すると発表した。

パワーエックスは自社で製造した中型の蓄電池および国内で最速クラスの出力150キロワットの急速充電器を組み合わせたEV充電ステーションの設置を進めている。そして今般、法人用途の充電プランを新たに発表した。その第1号としてアストラゼネカがサービス提供を受けることが決まった。

EV充電の新サービス開発に貢献

パワーエックスのEV充電ステーションでは、高出力で充電することにより、他社で一般的な急速充電ステーション(出力50キロワット)と比べ、充電時間の大幅な短縮を実現した。

パワーエックスによれば、他社の一般的な急速充電の場合、バッテリー容量100キロワット時のEVで充電量を20%から80%に高めるのに約1時間30分かかる。それに対して、パワーエックスの場合は30分程度と、従来比3分の1で済む。

また、スマートフォンのアプリによる事前予約システムを導入し、1回当たり最大75分の予約枠を設定した。これにより、「充電器に空きがない時に並んで待つ必要がなく、1回の充電で満充電ができるようになった」と、伊藤正裕・パワーエックス社長CEO(最高経営責任者)は説明する。

この新サービスの実現に一役買ったのが、製薬大手のアストラゼネカだ。同社は、医療情報担当者(MR)が使用するEVの利用状況や充電の課題など、社内で蓄積した実証実験のデータをパワーエックスに提供。これが新たな充電プランの実現につながった。

パワーエックスでは新サービスを足掛かりにして、急速充電ステーションを2025年1月23日時点での58カ所から、2026年3月までに250カ所へ拡大させる計画を打ち出した。

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