ガストの「24時間営業復活」に見る本質的な課題 チェーンで個店主義へのシフトが容易ではない訳

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

したがって、この「画一主義」は、「個店主義」の対極として広く日本で考えられてきた理論である。いわば、この考え方が染み付いている。

2020年にすかいらーくグループが全店同時に24時間営業を撤廃できた背景には、こうした「画一主義」があったともいえるだろう。本社の指示が一斉に支店に伝わり、すべての足並みを揃えて営業スタイルの変更を行うことができる素地があったからである。

しかし、先ほども確認したようにライフスタイルの多様化が進む現在においては、こうした「画一主義」自体が時代遅れになってしまっている感がある。日本のチェーンストアが現代に対応するために求められているのは、「画一主義」に代わる「個店主義」だともいえるだろう。

したがって、筆者としては今回のガストの政策について、「画一主義」のファミリーレストランにおいて「個店主義」がどのように行われるのか、ということに大きな興味がある。いわば、この挑戦は、日本のチェーンストア業界において強く信じられてきた思想に対する挑戦でもあるからだ。

1300店舗以上あるガスト、個店主義は容易ではない

具体的にそこではそのような問題が起きるか。2022年12月31日現在、ガストは全国に1317店舗を展開している。そのすべての店舗が、それぞれの時間で営業時間を変更するとなると、大きな支障が生じる恐れがある。

ガストはセントラルキッチン方式というシステムを採用しているが、これはいくつかの同一店舗の食事を一つの工場で大量に調理し、それを店舗に運んで現場で提供するという仕組みだ。同一の商品を大量に作ることによって、大幅なコスト減を図ることができる、ファミレスのお家芸の一つでもある。

しかし、このシステムが前提としているのは、ある程度の量の消費が見込める店舗が近隣に多数存在することだ。大量に作るのだからある程度の消費量が必要で、逆にいくつかの店舗で消費量が減ってしまう場合は、逆に工場稼働によるコスト高が生じる可能性があり、最悪の場合、そのセントラルキッチンがカバーする店舗全店を、黒字店舗まで含めて撤退しなければならない可能性さえある。

営業時間を一括で変更する場合には、工場の稼働率を下げ全体への供給量を同じように下げればよい。しかし、各店舗の営業時間が変更になれば、当然各店舗で必要となる料理の量も変わり、ある程度の小回りが必要になってくるだろう。大規模で一括供給を基本とするセントラルキッチン方式で果たしてこうした小回りが利くのかは疑問である。

このように、具体的なレベルでガストの「個店主義」が困難を抱えていることも事実だ。

次ページ権限委譲」が見られるうまくいくチェーンとは?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事