ガストの「24時間営業復活」に見る本質的な課題 チェーンで個店主義へのシフトが容易ではない訳

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つまり、それぞれのガストが立地する地域の特性によって、24時間営業が必要な場所とそうでない場所があるということである。もっといえば、それぞれの地域の特性に応じて、ある場所では、9時から21時まで、他の場所では6時から24時まで、そしてまた別の場所では24時間営業、とそれぞれの地域に合わせた営業時間が考えられるのだ。ライフスタイルが多様化した現代社会においては、全店で画一的に営業時間の変更を行うこと自体が難しいのである。

そして、この点は今回のガストの「24時間営業復活」において留意されている。ガストは24時間営業の復活の検討段階で、全店同時に24時間営業を復活させるのではなく、それぞれの立地する場所に応じた営業時間の設定するという、いわば「個店主義」ともいえる発想をもとにした対応を行うとしている。

「ガスト24時間営業復活」に隠された本質的な課題

さて、ここまでを前提として、最初に私が述べた「ガスト24時間営業復活に隠された、本質的な問題」について取り上げよう。それは、チェーンストアにおける「画一主義」と「個店主義」の対立である。

先ほども述べたように、ガストが今回検討していると発表した「各地域に合わせた営業時間の変更」という「個店主義」を、果たして「画一主義」が浸透したファミリーレストラン業態で行えるか否か、ということだ。

そもそもガストの業態であるファミリーレストランの業態は、ガストの前身ともいえる「すかいらーく」が登場した1970年代に遡る。当時、「すかいらーく」が世間を驚かせたのは、基本的には日本全国どこでも同じ味とサービスが提供されたからである。これは、セントラルキッチンを作って同じ味をそれぞれの支店に提供する仕組みや、徹底的に画一化されたマニュアルの存在によって為せる業であった。

こうした「画一化」の背景にあったのは、チェーンストア理論を提唱し、日本におけるチェーンストア業態を理論的に指導した渥美俊一氏の存在が大きい。渥美氏は日本をアメリカなどに並ぶ豊かな国にするためには、すべての物やサービスが同じように提供され、日本全国、どこでも同じようなレベルで同じレベルのサービスが提供される「画一主義」の必要性を強く説いた。

渥美氏はチェーンストア理論の研究会である「ペガサスクラブ」を主宰し、そこにはダイエー(現在はイオングループの傘下)の創業者・中内功氏や、イトーヨーカ堂やセブン-イレブン・ジャパンの設立者・伊藤雅俊氏などが参加していた。いわば日本のチェーンストアほとんどすべてが、渥美氏のこの理論に影響を受け、日本のチェーンストアの基本的な考え方がここから広まったと言ってよい。

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