ガストの「24時間営業復活」に見る本質的な課題 チェーンで個店主義へのシフトが容易ではない訳
例を挙げるまでもなく、24時間営業の場合、誰かしらが常に働いていなければならない。コンビニエンスストアでも問題になるように、アルバイトでシフトが賄えない場合、そこに入るのは店長をはじめとする社員であり、社員に大きな負担がかかることも問題となっていた。このような事情を鑑みての24時間営業の撤廃であったため、当時はガストの決断に対して賞賛の声も多く寄せられた。
しかし、その一方で、24時間営業の店が減少することによって不便さを覚えるユーザーも少なからずいたようだ。コロナ禍での外出自粛要請の際に問題になったように、エッセンシャルワーカーや夜職の人々にとっては、食事を取る場所がなくなってしまったということでもあるからだ。
また、「場所がなくなった」ということでいえば、労働者側も同じだ。昼に授業がある学生などにとっては、夜の時間帯こそ働くことができる時間帯でもあっただろうが、そうした就業機会が失われてしまった側面もある。実際、マイナビキャリア・リサーチLabが実施した2021年2月26日~3月2日に実施した「大学生のアルバイト実態調査」によれば、大学生が現在アルバイトをしている割合は62.9%で、前年と比較して8.9ポイント減少。多くの学生が、アルバイトをしたくてもできない状態になっていることがうかがえる。
コロナ禍で飲食店そのものが営業を自粛していたこともあるだろうが、ファミレスなどが深夜営業を行わなかったことも、こうした就業機会の減少につながったのではないか。
このように、「24時間営業完全撤廃」には、プラスの側面と同様に、マイナスの側面もあったことをまず指摘しておかなければならない。
浮き彫りになった「完全」撤廃の問題点
しかし、このように2つの側面が生まれてしまった原因は、非常に単純なことだと筆者は考えている。つまり、「24時間営業の完全撤廃」の「完全」という部分だ。2020年、運営元であるすかいらーくは、当時24時間営業を行っていた店舗のすべてで、24時間営業を取りやめた。この「完全」撤廃こそが問題を生んだのである。
そもそも、ガストのように全国に店舗があるチェーンストアの場合、それが立地する街や地域の特性によって、そこを使うユーザー層は大きく変わる。若者や単身者が多い都市部であれば夜に一人で外食をするユーザーが多いだろうから、24時間営業の撤廃は大きな影響を生む可能性が高い。逆に住宅街や郊外などファミリー層が多い地域では、必ずしも24時間営業をする必要はないだろう。
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