その都度メディアは値上げを憂い、さらにSNSなどではネガティブなコメントをよく見かける。しかし、結果からいえば、値上げが続いているにもかかわらず、日本の消費者がマクドナルドを避ける理由になっていないと解釈するほかない。マクドナルドが他社に先行して値上げをしたが、これは他社も追随する流れになると私は思う。
ところで、多くの論者が指摘することだが、日本のマクドナルドの場合は、値上げ後の価格も世界的に見て高いとはいえない。アメリカではマクドナルドの各商品の価格が地域によって異なると知られている。ただ代表価格でいえばビッグマックの価格は5.47ドル。これを1ドル135円で計算すれば、738円。もちろんもっと安価に販売している地域もあるものの、どの数字を使っても日本より安価ではない。
今回、日本マクドナルドが2023年1月16日に引き上げた後のビッグマックの価格は450円(それまでは410円)。そう考えると、値上げ後であってもアメリカのそれと1.64倍もの差がある。さらにアメリカ以外で、もっとビッグマックの価格が高い国はほかにもある。そう考えると今の現象は、日本の物価が世界基準の水準を追随している道半ばの状態とも思える。
値上げは相対的に評価される
マクドナルドの値上げの評価は結局のところ相対的にしか決まらない。他のフードチェーンがもっと価格を上げるようになったら、マクドナルドは魅力を保つだろう。もしかすると外食を控え、スーパーで内食を選択するかもしれない。しかしそれも、スーパーの商品の価格がどれだけ上がるかによっても左右される。消費者からは「これくらいの値上げなら、マクドナルドで食事したほうが良い」と判断され続けるかもしれない。
今回、プレミアムローストコーヒーSサイズが100円→120円となるが、この20円の上昇幅、率は小さくない。ただし、それでもコーヒー1杯が400~500円以上となるようなカフェよりもリーズナブルだと評価する人はいるだろう。結局のところ、値上げをしたとしても相対的な価値を提供できているかにかかっている。
消費者にとってはやや厳しい言い方になるものの、企業経営側からすれば、値上げしても利益が最大化するのであれば値上げするべきだし、それが株主に報いることになるだろう。さらに健全な経済のなかではまっとうな値上げは認められるべきであり、それによって賃上げにつなげていくべきではないだろうかと私は思う。
マクドナルドの値上げはかなりの頻度で、その上昇率も大きい。ただし値上げそれ自体で論評できるものではなく、あくまで価値と相対的に決まる。この1年はマクドナルドが値上げしても売上高等は減少しなかった。この点は昨年から3度目となった値上げに踏み切れるだけの判断材料だったのだろう。
ただし、今回も売上高がマイナスにならない、とは言い切れず、動向を注視したい。同時にこれは「健全な値上げとは何か」ということを投げかけているとも言えるだろう。
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