「ダブル資格」目指すことはリスキリングに有効か 「弁護士・税理士」など複数の資格取得がブーム

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ところで、冒頭の「中小企業診断士だけでなく、もう1つ2つ資格を取得した方が良いですか」という質問に、筆者はどう答えているのでしょうか。メリット・デメリットを紹介したうえで、「中小企業診断士だけで十分です」と答えています。筆者の周りにも資格を5つ以上持っている強者が多数いますが、勉強好きが高じて大学教授に転身したSさんを除いて、あまり充実した人生を送っているように見えないからです。

資格をたくさん取る人に共通するのは、資格の取得が目的になってしまっていることです。ある資格を取ったら「次はこの資格」と常に勉強しているだけで、資格を活用することを考えていません。

資格はあくまでも「きっかけ」

資格の活用というと、資格と関連する業務に従事することだと思いがちですが、それだけではありません。活動の幅を広げ、自分を変える「きっかけ」にすることが、資格活用の本質です。

資格によって、二つのきっかけが得られます。一つは、関心を広げ、知識を深めるきっかけです。資格保有者が集まるイベントや研究会に参加することで、最先端の高度な知識や斬新な視点を得ることができます。もう一つは、繰り返しですが、人脈形成のきっかけです。

次から次へと資格を取得する人は、こうしたきっかけを台無しにしています。一方、資格をきっかけに関心を広げ、知識を深め、人脈を形成し、生まれ変わったように大活躍している人がいます。こういう人は、腰を据えて活動するために、とくに関心のある1つないし少数の資格に絞っています。

「資格はあくまでもきっかけ」と聞いて、「なんだ、その程度のものなのか」と思いましたか、それとも「よし、資格を取って人生を変えよう」と思いましたか。資格取得に挑戦し、人生を変えようという後者が多いなら幸いです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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