「ダブル資格」目指すことはリスキリングに有効か 「弁護士・税理士」など複数の資格取得がブーム

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複数資格を強みにしようというトレンドが広がっている(写真:muu/PIXTA)

リスキリング(学び直し)のために、弁護士・税理士・中小企業診断士といったビジネス系資格の取得を目指す動きが広がっています。そして、2つの資格を保有するダブルライセンス、3つ保有するトリプルライセンスというケースを見受けるようになりました。

筆者は中小企業大学校の中小企業診断士養成課程の講師をしており、受講者・卒業生から「中小企業診断士だけでなく、もう1つ2つ資格を取得した方が良いですか」という質問をよく受けます。

新年を迎え、「今年は資格を取るぞ!」と意気込んでいる読者が多いことでしょう。今回は、ダブルライセンスというトレンドの検討を通して、資格の役割について考えてみます。

士業ではダブルライセンスがブームだが

ダブルライセンスの意義は、資格を使ってビジネスをするか、自己啓発を目的にするかで、大きく違います。まず、資格を使ってビジネスをする専門家、いわゆる「士業」から。

いま士業の世界では、ダブルライセンスがブームです。多くの公的資格で2000年頃からの試験制度改革が行われ、資格保有者が激増しました。よく似た民間資格が乱立するようになっています。この厳しい状況で他の資格保有者と差別化するために、ダブルライセンスを切り札にしようというわけです。

たとえば弁護士は、登録者数が2000年1万7126人から2022年4万4101人へと増加しました。大乱戦の中、顧客を獲得するには法律だけでなく、企業経営や税務の知識が重要ということで、中小企業診断士や税理士を取得するケースが増えています。

ということで、一般的に士業にとって「ダブルライセンスには大きな意味がある」と考えられています。ただ、筆者はこの一般的な見解にやや懐疑的です。

日本では1990年代まで、資格は「その分野の専門能力を保有する」ことの証明でした。しかし、2000年頃以降、資格取得の難易度が下がり、多くの資格が乱立し、「その分野の必要最低限の知識を有する」ことを示すに過ぎなくなっています。資格保有者はもはや「先生」でもなんでもありません。

次ページ2つ目以降の資格は「ないよりはマシ」程度
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